1996 Fiscal Year Annual Research Report
わが国長期国際流通市場に対するインフレーションの影響の研究
Project/Area Number |
07630081
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Research Institution | HITOTSUBASHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
釜江 廣志 一橋大学, 商業部, 教授 (60091542)
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Keywords | 長期国債 / 国債流通利回り / Fisher仮説 / 市場の効率性 / スプライン関数 / 指標銘柄 / 共和分 / イールド・カーブ |
Research Abstract |
本研究は、国債市場で決定される利回りとその期間構造を検討し、名目の利回りと実質利回りの差とインフレ予想値との関係を定式化するFisher仮説やその代替的な諸仮説は成立するか、などを理論的・計量的に分析して、国債流通市場の構造を解明し、併せて市場の効率性も検討することを目的とする。国債流通市場が実質的に成立した77年から現在までの期間において、利回りの名目値と実質値の差はインフレ予想値に等しいとのFisher仮説は成立するかなどを中心に分析を行った。 分析に用いる国債利回りの名目値は、利付債の実際のデータから3次のスプライン関数を用いて特定のク-ポンと残存期間を持つ債券の価格を求め、これらの債券の最終利回りを推計して得た。その際、各銘柄の売買高の違いを考慮することが必要であるので、各銘柄の売買高をウェートとする加重最小2乗法を使い、異なるウェートを持つ銘柄の差を考慮して、利回り、即ち割引債の最終利回りであるスポット・レートの推計を行った。なお、サンプルからスポット・レートを推計し、イールド・カーブを描くとき指標銘柄を除くとスムーズであり、スポット・レート推計には指標銘柄を除くサンプルを用いる方が適切であった。 Fisher効果をテストするのに式i_t=α+λ・E_t(π_t)+v_tで「λ=1かつα=一定」が成立するかを検定した。変数が単位根を持つので、OLSではなくJohansenの共和分法を用いて検定し、その結果によれば、77年から93年半ばまでの期間では国債利回りはこの仮説を満足しない。さらに、Fisher仮説の代替的な仮説として、Mundel仮説とDarby仮説があり、前者では、期待インフレ率の変化が利子率へフルには影響を与えない、つまりλ<1を意味する。Stock-Watsonの方法を用いてテストするとMundell仮説を支持する効果が得られた。
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