1996 Fiscal Year Annual Research Report
欧州通貨制度、欧州通貨単位および欧州通貨統合に関する理論的・実証的・歴史的研究
Project/Area Number |
07630085
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井澤 秀記 神戸大学, 経済経営研究所, 助教授 (80159657)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 誠一 神戸大学, 経済学部, 教授 (40135778)
|
Keywords | 欧州通貨制度 / 欧州通貨単位 / 欧州通貨統合 / 欧州単一通貨 / ユーロ(euro) / マ-ストリヒト条約 / 欧州通貨危機 / 欧州中央銀行 |
Research Abstract |
井澤は,1999年1月の実現を目指している欧州通貨統合の進捗状況を考察し,今後の課題を展望した。マ-ストリヒト条約に明記された通貨統合の参加5条件のうち財政基準が,最も困難である。欧州通貨制度(EMS)の為替相場メカニズム(ERM)に96年10月フィンランドが加盟し,同年11月にイタリアが復帰した。通貨統合の参加条件の一つになっているからである。この結果,欧州連合(EU)15ヵ国のうちERMに入っていない国は,英国,ギリシャ、およびスウェーデンの3ヵ国となった。96年12月のダブリンでのEU首脳会議において,単一通貨ユーロ(euro)の価値を維持するための安定協定が最終合意された。これにより統合後も健全財政を維持することが義務づけられる。また,ユーロと通貨統合不参加国の通貨との間の新たなERMの創設も決定した。97年1月に,欧州中央銀行の前身である欧州通貨機関(EMI)が,通貨統合後の金融政策の運営に関する報告書を発表したが,金融政策のターゲット決定などについて課題を残している。 藤田は,欧州通貨制度(EMS)と欧州通貨単位(ECU)について制度的に考察した。通貨代替の条件をより厳密に検討することを通じて,ハードECU構想のような,並行通貨(パラレル・カレンシー)が国民通貨に代替する通貨統合のアプローチは非現実的であり,EUの漸進的アプローチの方がより現実的であることを明らかにした。この点については,96年5月26日に金融学会(武蔵大学)で報告した。また,92,93年の欧州通貨危機の原因を,ドイツとその他の国の景気変動のズレおよび通貨投機に求め,ドイツを中心とするEMSの非対称的運営の意味を再検討し,非対称性を前提にしつつも,ドイツは制度全体を見据えた金融政策を実施すべきであった点を明らかにした。
|