Research Abstract |
本研究のねらいは,非営利組織という枠組みにおいて大学図書館経営を再検討し,新たな大学図書館経営論を設定することを目指すものである。 研究は,組織理論における基本概念としての“意思決定"と,非営利組織の経営にとって重要な,使命を踏まえた“リーダーシップ"という2点に着目し,この二つの概念を基軸に大学図書館の組織運営を動態的に解明しようとした。そのために,手法としては,フィールド・ワーク的手法とり,細部にわたる経営実態の把握を試みた。それとともに,客観的データの得やすいアンケート・サーベイも実施した。 主に第1年次に,フィールド・ワークを行った(17大学の図書館長及び事務(部)長にインタビューを試み,それぞれ大学図書館運営における,経験や考え方を聴取した)。この聞き取り調査において,大学図書館の運営を,公式組織の観点から説明できる範囲には限界があること,そうした観点よりも,むしろさまざまな要素からなる全体(システム)としてとらえるシステム論的組織論による解明のほうが適合することを確認した。また問題はどのような要素が絡んでいるかであった。 この知見を踏まえて,第2年次においては,同じく図書館長及び事務(部)長に対して,アンケート調査を行った。(対象は,国立大学については全部、公私立大学については,35%の無作為抽出による,合計262館,回答率は全体で,館長宛74%,事務(部)長宛79%) このアンケート調査から,図書館長に関しては,使命認識,意思決定者としての事実判断と価値判断の基盤,情報の入手・発進の機会,あるいはリーダーシップなどに関連するデータが,また事務(部)長に関しては,意思決定における館長との関係,組織運営者としての問題意識などデータが得られた。
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