1995 Fiscal Year Annual Research Report
デリバティブの認識測定と会計基準に関する計算構造論的研究
Project/Area Number |
07630121
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 京都大学, 経済学部, 助教授 (80173392)
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Keywords | 財務会計 / 会計測定 / 取引 / デリバティブ / 金融派生商品 / オフバランス取引 |
Research Abstract |
現行会計実務の基本的枠組みをなす取得原価主義会計を考察の出発点とした場合、いわゆるオフバランス取引(off-balance sheet activity)のオフバランス化を導くような認識拡張の可能性としてどのような可能性が見いだされるか、また当該各可能性にはどのような条件がともなうかを、リ-ス取引とオプション取引を素材としながら、理論分析的に検討した。その結果、以下のような諸点が明らかとなった。 (1)認識拡張の鍵は、取引概念の拡張、とりわけ取引概念の中核をなす現金概念の拡張に見いだされる。現金概念の拡張をつうじた認識拡張の一般的可能性として、1次認識(原始認識)の拡張の可能性と、2次認識(決算認識)の拡張の可能性の、2つの指摘することができる。これら2つの一般的可能性を、リ-ス取引とオプション取引の認識問題にそくして検討した結果、リ-ス取引は1次認識の拡張を決定的な契機として、オプション取引は2次認識の拡張を決定的な契機として、それぞれ認識しうることが明らかとなった。 (2)認識拡張は、現金概念の有する諸種の制約を緩和することによって達成される。したがって、認識拡張は、会計数値の硬度(hardness)の後退を不可避的にともなっている。会計数値の硬度の後退は、1次認識の拡張においてよりも、2次認識の拡張において、著しい。したがって、伝統的な取得原価主義会計からの乖離も、1次認識の拡張による場合よりも、2次認識の拡張による場合の方が大きい。 (3)認識拡張は具体的にどのような形態をとるにせよ、現行会計実務の変更として現象せざるをえない。そして、現行会計実務の変更には、諸種のコストがともなう。具体的には、(1)エージェンシー費用の増大、(2)情報誘導にともなう機会費用の発生、(3)計算コストの増大が考えられる。現行実務の変更が是認されるのは、当該変更のベネフィットが、これらのコストを上回る場合に限られる。経済的観点から見た場合、このことが認識拡張の条件となる。
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