1995 Fiscal Year Annual Research Report
小質量星の大気構造と観測特性:M型矮星から褐色矮星へ
Project/Area Number |
07640350
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 隆 東京大学, 理学部, 教授 (20011546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 隆史 国立天文台, 岡山天体物理観測所, 助手 (70142255)
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Keywords | 分子 / ダスト / 小質量星 / M型矮星 / 褐色矮星 / ダ-クスター |
Research Abstract |
本研究では、すでに分子吸収に関する詳細な研究に基づきM型矮星,褐色矮星の統一的な非灰色大気モデル構築し,これによるM型矮星の観測結果の詳細な解析から大気構造、基礎物理量、化学組成等を決定する基礎的研究を行っていたが,本年度はさらにダスト吸収の効果を詳しく検討した.その結果以下の新たな知見が得られた: [1]本年度に完成したダストモデルによると,M型矮星においてはその有効温度が2,800K以下になるとダストが形成される.晩期M型矮星の輻射エネルギー分布の解析からこれらの星には実際にダストが存在することを示した. [2]さらに褐色矮星候補GD165Bにダストが存在することは確実であることを示し,また,その有効温度矮星である可能性も高い.晩期M型矮星では酸化アルミニウム(Al_2O_3)ができるのみであり,また,遷移天体であるGD165Bでは鉄ができることが観測データの解析から明らかにされる. [3]晩期M型矮星及び遷移天体におけるダスト形成では,氣相/液相/固相間の分離は起こらずこれらが均質に混合した状態にある. [4]より低温で正真正銘の褐色矮星GL229Bには見かけ上ダストは観測されずメタンなどが観測されたが,このように熱力学に反することは起こり得ない.ここではシリケート(M_gSiO_3など)も多量にできるが雲の形で存在し,その間隙から流出したメタンなどの揮発性ガスが大気上層を満たすため,ダストは観測されないだけであろう. [5]このことから,低温の褐色矮星では,氣相/液相/固相間の分離が起こる.そのガス成分には我々の過飽和分子モデルが近似的に適用できるが,厳蜜には古典的恒星大気理論では扱えず気象学の対象となる.即ち,ここでは鉄蒸気の霧が発生し,シリケートの雲ができ,雨-ただし水ではない!-が降る. [6]以上から,褐色矮星にはダスト及び分子のスペクトルが各々支配的である2種類が存在することを示し,その各々に対応する観測特性を赤外2色図で示し今後の褐色矮星探査の指針を明かにした.
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Research Products
(1 results)