1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640390
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
富松 彰 名古屋大学, 理学部, 教授 (10034612)
|
Keywords | 臨界重力崩壊 / 量子蒸発 / ブラックホール物理 / 量子重力 / 一般相対論 |
Research Abstract |
物質場の球対称重力崩壊と動的ブラックホールの性質を古典論及び量子論のレベルにおいて解析し、臨界現象と量子蒸発についての研究を進展させた。その主な研究成果は次の通りである:1)準定常状態にあるブラックホールの熱的量子蒸発においては、その表面重力加速度が重要な熱力学的量になることが知られている。本研究では、動的状態にあるブラックホールに対しても表面重力加速度の概念を拡張・定義することに成功し、種々のモデルに適用してその値を評価した。2)スカラー場の重力崩壊では、波の自己重力と分散性との競合によるブラックホール形成の臨界現象が現れる。本研究では、臨界状態に近いブラックホールの中心部に発生する時空の特異点構造という観点から臨界現象の本質の理解を試みた。そして、特異点構造の動的変化を解析し、ブラックホールの重力質量に関するスケーリング則が成立する過程を明らかにした。また、臨界現象の特徴の1つであるスカラー場の周期的なパターン構造がブラックホール領域の特異点近傍で破綻していく様子を示し、そのパターン周期と重力質量のスケーリング則との関係を見出した。3)スカラー場の自己相似的重力崩壊のモデルに正準量子化の方法を適用し、ブラックホールの量子蒸発の波動関数を与えた。これは重力場の量子化を含むレベルでブラックホール蒸発過程が具体的に示された初めての例であり、蒸発機構についての新しい視点が提示されている。4)球殻状の物質の重力崩壊についても考察を進めており、球殻の運動を量子化する手法を発展させることによって、形成されるブラックホールの重力質量の離散固有値スペクトルを導出することに成功している。 なお、成果の1)と2)については論文を準備中又は投稿中であり、3)と4)については雑誌において発表済み又は発表予定である。計画の初年度に得られたこれらの研究実績は次年度へのステップをなすものである。
|
-
[Publications] A.Tomimatsu: "Quantum gravitational collapse of a scalar field and the wave function of black hole decay" Phys.Rev.D. 52. 4540-4547 (1995)
-
[Publications] K.Nakamura: "Quantum formation of black hole and wormhole in gravitational collapse of a dust shell" Phys.Rev.D. 53(発表予定). (1996)