1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640398
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
静谷 謙一 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (50154216)
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Keywords | ゲージ理論 / 量子ホール効果 / 端電流 / 多重極展開 / ドハース・ヴァンアルフェン効果 / 対称性 |
Research Abstract |
多重極展開の考え方は、短距離の力学と長距離の力学を系統的に分類することにあり、素粒子物理のみならず物性物理、特に量子伝導現象の研究に有効である。解像度の変化と共に物理系にどのような対称性が現われるか知ることにより、系の相転移や集団励起を議論できる場合は多い。この考え方を踏まえながら,平成8年度には主として整数量子ホール効果の根幹に関わる諸問題を研究した。その内容は以下の通りである. 1.ホール電流が試料の内部を流れるのかそれとも試料端に限るのか理論的に特定することは、量子ホール効果の本質に関わる重要な問題である。これに関して、有限幅のホール電子系では、局在が原因となってホール電流のかなりの部分が系の端を流れるようになるという考えを既に提唱した。目下、この端電流の描像を検証するべく、計算機を用いたホール電流分布に関する数値実験を進めており、期待に沿った結果が得られつつある。併行して、理論の基盤にある「局在状態の不動性」と「電流の補償定理」がゲージ不変性に由来していることを(以前より直接かつ一般的な形で)指摘する論文を執筆している。別途に、不純物のないホール電子系に対する数値的な解析から端電流の分布と方向が端電子状態の出現とともに大きく振動することに気付き、この端電流の振動がドハース・ヴァンアルフェン効果と関連していることを指摘する論文を発表した。 2.ホール電子系のマクロな電磁的性質は、多重極展開の考え方に沿ったW_∞ゲージ理論という普遍的な枠組で記述できることを既に指摘した。ひき続き、W_∞ゲージ理論のより深い理解と応用の道を探っている。
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[Publications] K.Shizuya: "Current compensation and edge current in the quantum Hall effect" Proceedings of Frontiers In Quantum Field Theory. 379-383 (1996)
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[Publications] K.Shizuya: "Current distributions and the de Haas-van Alphen oscillation in a planar system of Hall electrons" International Journal of Modern Physics B. (掲載予定). (1997)