1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640430
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三本木 孝 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60000791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長沢 光晴 東京電機大学, 工学部, 助手 (90277236)
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Keywords | 密度波 / スライディング / 非線型伝導 / 量子トンネル / 誘電応答 |
Research Abstract |
低温・高電場領域での電場・電流特性から、低次元伝導性固体の密度波状態で密度波の並進運動に量子効果があるかどうかを調べた。(TMTSF)_2ASF_6のスピン密度波状態における非線形伝導を約0.6K以上で測定した。その結果、大気圧に近い低圧領域では最低温度でも非線形伝導のしきい電場が存在し、その上での非線形伝導度が量子トンネルの理論の予言と大きく異なることことを見いだした。これまで理論・実験の両面からスピン密度波の量子的トンネル現象が示唆されているが、上の結果は量子トンネル効果の存在を否定する有力な証拠である。また、しきい電場の温度依存性は不純物によるピン止めを考慮した理論の結果と異なり、低温でも強く温度に依存する事を見いだした。これは、スピン密度波相のなかで何らかの相転移に起因するものである可能性を示す。 小さな断面積の(TMTSF)_2ASF_6試料について非線形伝導度を測定した。断面積が約10^5cm^2の試料では太い試料と同様にしきい電場以上で伝導度が増加するが、断面積が10^3-10^4cm^2の試料と比較すると、しきい電場の値が4Kで約1桁大きく、また1-10Kの広い温度範囲にわたってほとんど一定である。細い試料のスピン密度波転移温度やノーマル状態での伝導度には異常がないことから、断面積が限界値以下に小さくなると表面がピン止めの原因となると推論される。 低温・低電場で、パルス電流に対する電圧が誘電的に応答することを見いだした。この現象はしきい電場の約2倍以下で観測される。外部電場の下で密度波の内部変形が生じ、分極が生じたものと解釈される。電圧波形から求めた分極電荷密度がしきい電場で最大値を示すことから、内部変形が限界値に達してピン止め源の束縛から抜け出すことが確かめられた。
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Research Products
(1 results)