1995 Fiscal Year Annual Research Report
光電子放出測定によるBaF_2最外内殻ホールの緩和過程の研究
Project/Area Number |
07640449
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
江尻 有郷 琉球大学, 教育学部, 教授 (70012383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波田野 彰 琉球大学, 教養学部, 助教授 (10012395)
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Keywords | アルカリ土類弗化物 / クロス発光 / オージェ効果 / 光電子放出 / STE発光 |
Research Abstract |
最外内殻Ba^<2+>5pホールへの価電子帯電子の輻射遷位によるクロス発光はオージェ効果(無輻射遷位)と競争過程になるが、Kubotaら(日本1992)はBaF_2並びにCsFでは最外内殻レベルは浅い上、充分な幅がないためオージェ効果は許されないと指摘した。我々は、最近、クロス発光励起スペクトルと相補的関係にある光電子放出収率の高分解スペクトルをBaF_2で調べ、励起光エネルギーがバンドギャップEgの2倍、2E_gより高エネルギー域でオージェ効果の寄与を観測し,クロス発光(Nunoya 日本1992)の急激な減少と符号することを確認した(A.Ejiriら、J.Phys.Soc.Jpn.1995)。これは上述のKubotaらの指摘を覆すと共に、Ba^<2+>5p内殻レベルの幅がみかけ上かなり広いことを示し、注目を集めた。 我々は、その後、アルカリ土類弗化物BaF_2,SrF_2,CaF_2の光電子収率スペクトル並びにVUV励起の発光スペクトルや発光の励起スペクトルの温度依存性を調べ、価電子ホール、内殻励起子、内殻ホールの緩和に関するダイナミックスを論じた。(A.Ejiri et al:Proc.11th Int.Conf.VUV Rad.Phys.1995 Tokyo)。80Kの低温にすると、CaF_2、BaF_2で光電子収率スペクトルの価電子寄与は急速な減少を示し、アルカリハライドには見られない現象である。この現象を理解するため、価電子励起のSTE発光の温度依存性をしらべ、低温で発光が増大することを確かめ、光電子収率とSTE発光が競争過程であることを確認できた。内殻ホールに関しては、BaF_2で、低温でクロス発光の減少とSTE発光の増大が見られ、互いに相補的な温度依存性を示した。これは、低温では伝導帯電子が内殻ホールと再結合してオージェ効果を起こす過程が主要になることを示唆している。 以上の様に発光測定研究が先行して一定の成果を見ているが、本年度分は追加予算によるものなので、当初の計画は完了してない。薄膜試料作成用の高真空蒸着装置を購入整備して薄膜発光測定の準備を完了し、光電子放出絶対強度測定の準備も進んでいるので、次年度の物性研放射光施設並びに分子科学研UV-SORにおける共同利用研究によって、これらの計画を遂行する。
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[Publications] 江尻有郷,波田野彰: "Vacuum UV Photoelectric Yield Spectra of BaF_2 and SrF_2;" J.Phys.Soc.Jpn.65. 1484-1488 (1995)
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[Publications] 江尻有郷,波田野彰: "Vacuum UV Photoelectro Dynamics in Alkali Earth Fluorides" J.Electron Spectrose.Related Phenom.(Proc.11th Int.Conf.VUV Rad.Phys.). 1-4 (1996)
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[Publications] 江尻有郷,波田野彰: "PHOTOELECTRIC YIELD SPECTRA OF BaF_2 at the ROOM TEMP.and 80K" Activity Report of Synchrotion Radiation Lab.(東京大学). 1994. 24-25 (1995)