1995 Fiscal Year Annual Research Report
比熱による強相関有機化合物の金属-絶縁体転移の研究
Project/Area Number |
07640497
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
中澤 康浩 岡崎国立共同研究機構, 分子化学研究所, 助手 (60222163)
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Keywords | 有機超伝導体 / 比熱 / 電子比熱係数 / Mott絶縁体 / d-波超伝導 |
Research Abstract |
本研究では、電子相関の効果が重要な役割を演じるいくつかの有機化合物において、金属相、絶縁体相、およびその両者の境界での振る舞いを、低温比熱の測定により明らかにすることを主たる目的にしている。本年度は、BEDT-TTFをドナー分子とする、k-(BEDT-TTF)_2X[X=Cu(NCS)_2,Cu[N(CN)_2]Br,Cu[N(CN)_2]Cl]系を中心に研究を行った。 絶縁体相に位置するk-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Cl]では、電子比熱係数γが、完全に零であり、しかも8Tの強磁場下でもその値に変化がない事から、この物質ははっきとした電荷ギャップを持つ絶縁体であることが明らかになった。金属性を示唆するバンド計算の結果と考えあわせると、この系は強い電子相関に支配されたMott絶縁体状態にあることが結論づけられた。T_N=27K付近の反強磁性転移の周辺では、特に比熱の温度依存性に異常が見られず、磁気エントロピーは、転移点より高い温度に幅広く分布していると考えられ、酸化物の高温超伝導体の母体となる絶縁相と良く似た電子状態が形成されているといえる。 一方、10K級の超伝導体を示す金属相では、γ値は、ほぼ20-30mJ/molK^2程度と他のBEDT-TTF系の有機伝導体と比較して同程度の値であり、転移温度と電子状態密度との間には特に相関がないことが判明した。K-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]BrにおいてBEDT-TTF分子エチレン基をd化した試料を使って格子比熱の差し引きを行うと、3K以下の低温域で電子比熱がT^2の温度依存性を持つ事が明らかになった。これは、この系での超伝導が通常のBCSタイプでなく、超伝導ギャップがフェルミ面の一部で零になるd-波的な超伝導の可能性を強く示唆する結果である。 今後の測定温度範囲を希釈冷凍機温度まで拡張し、18Tの強磁場磁石中での測定と組み合わせ、金属-絶縁体相の境界領域でのγの変化を追っていく予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Y.Nakazawa,H.Sato,A.Kawamoto,K.Kanoda: "Specific heat study of α-(BEDT-TTF)_2MHg(SCN)_4" Synthetic Metals. 70. 943-944 (1995)
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[Publications] Y.Nakazawa,H.Sato,A.Kawamoto,K.Kato,K.Kanoda: "Complex susceptibility and penetration depth of BEDF-TTF based layered superconductors" Synthetic Motals. 70. 919-920 (1995)
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[Publications] Y.Nakazawa,A.Kawamoto,and K.Kanoda: "Characterization of low-temperature electronic states of the organic conductors a-(BEDT-TTF)_2MHg(SCN)_4(M=K,Rb,and NH_4)by specific-heat measurements" Physical Review B. 52. 12890-12894 (1995)
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[Publications] Y.Nakazawa,and K.Kanoda: "Electronic structure of insulating salts of the K-(BEDT-TTF)_2X family studied by low-temperature specific-heat measuements" Rhysical Review B. 53発表予定. (1996)