Research Abstract |
本科学研究費の補助のもとで,我々は1次元量子スピン系における新しい量子基底及び低エネルギー励起状態を,主として次の2つの場合について,数値的方法を用いて調べた。 1.最近接相互作用と第2近接相互作用とが競合するS=1/2反強磁性系の場合。 2.ボンド交代のある最近接相互作用と1イオン型異方性エネルギーをもつS=1反強磁性系の場合。 1.の場合については,最近接相互作用定数J_1と第2近接相互作用定数J_2との比j≡J_2/J_1が1より大きい場合の基底状態を,密度行列くりこみ群法を用いて研究した。現在のところ,スピン数が80〜100個迄の有限系に対するエネルギーギャップの計算結果から,j=1の時の基底状態であるダイマー状態が,j→∞の極限まで生き残るというtentativeな結論を得ている。今後,更に大きな系を取り扱うことを目指して密度行列くりこみ群法のプログラムの改良を行い,また,ダイマー相関関数の計算も行って,この問題に対する明確な結論を得る計画である。 2.の場合については,先ず,α対D(αはボンド交代パラメータ,Dは1イオン型異方性エネルギー定数)平面上での基底状態相図を研究した。スピン数が16個迄の有限系におけるNeel order及びstring orderに関するビンダーパラメータを,我々が開発した汎用プログラムパッケージKOBEPACK/Sを用いて計算し,その結果を解析することにより,基底状態として出現する4つの相,即ち,Neel相,Haldane相,Large-D相,Dimer相,の間の相境界線を決定した。更に,坂井・高橋によって提案された方法を用いて,種々のα,Dの値に対して,基底状態磁化曲線を求めた。その結果,α,Dがある条件(D=0,α>0の領域を含む)を満たすとき,磁化曲線にいわゆる1/2-plateauが出現することが明かになった。なお,この研究でも,KOBEPACK/Sを用いた。
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