Research Abstract |
三宅島の島内8ケ所において,プロトン磁力計による全磁力の連続観測を行った(1995年10月-97年2月).1995年11月に,八丈島・三宅島付近をそれまで東向きに流れていた黒潮が蛇行を開始し,北向きに転じて,1996年6月頃に東西流に戻る,という海流変動があった.三宅島ではこれに伴って,全磁力が5nT以上も増加した.これは典型的な火山地磁気効果と同程度の変化である.移動観測を主体とした当初の計画を変更して,多数の磁力計を投入し,多数点での連続観測に切り替えた.また,三宅島火山の顕著な割れ目噴火地帯2ケ所で,自然電位の連続観測を行い,黒潮変動に対応する電場の変化も観測された.このように,海流の流路変動に伴う電磁場変化が,離島において十分多数の観測点で観測されたのは,世界で始めてである.黒潮変動磁場を正確に検出するために,八丈島(水路部)の全磁力データを経由して,柿岡(気象庁)を基準とした三宅島の全磁力変化を求めた.その結果,三宅島火山を監視する上では,黒潮変動磁場が最大のノイズ源であること,しかしその影響は,三宅島が黒潮流軸付近に含まれる場合に限られる,ことが明らかになった.このことから,1980年以来の三宅島火山監視のための全磁力データに含まれる,黒潮変動による誤差を評価できる.三宅島の深部比抵抗構造の情報として,全磁力データからCA変換関数を求めた.これから決められるインダクション・アロ-の方向は,周囲の海に向かわず,いわゆる「離島効果」が小さいこと,おそらく三宅島の直下の比抵抗が非常に低い事が示唆される.さらに本研究では,1983年噴火以来の電磁気観測成果を総括して,三宅島火山の噴火機構の考察を行った.本研究によって,21世紀初頭に予想される三宅島火山の噴火を監視する,電磁気的観測システムが稼働を始め、かつその信頼性が吟味された,といえる.
|