Research Abstract |
頁岩の中には,銅,鉛,亜鉛など様々な重金属に富むものが見出されている。本研究は,鉱床成因論,古海洋環境解析復元において重要であるにもかかわらず情報が不足していた我が国の新第三系頁岩について,基本的記載,重金属の存在量や存在様式(特に有機物との関係)の解明,生物地球化学的環境解析を行い,含金属頁岩の時空分布および成因,特に生成環境のモデルを構築することを目的としている。本年度(初年度)は,主にグリーンタフ地域より数件を選定し,地質調査,試料調査,重金属分析,イオウ同位体比分析などの概査を主として行った。これまで得られた重要な成果を以下に示す。 太平山地域で行った西黒沢期から船川期にわたる層序学的に一連のプロファイルにおけるバルク試料の検討では,西黒沢期の泥岩は女川期,船川期の泥岩と比較して銅,鉛,亜鉛,バリウムなど主要な重金属元素を濃集している傾向が見出された。特に,西黒沢期末期に鉛,亜鉛の相対的な濃集が認められる。硫黄同位体比においても,西黒沢期ではδ^<34>S=-30〜-40‰(CDT)程度であるのに対し,女川期ではδ^<34>S=+5〜-10‰,船川期ではδ^<34>S=-15〜-30‰程度と顕著な差異が認められる。また,各地域の地質概査より得られた知見としては,第三系西黒沢期末から女川期の頁岩,泥質岩において,特徴的に黄鉄鉱ノジュール,炭酸塩岩層(及びノジュール)が見出されることがあげられる。これらの黄鉄鉱ノジュールは,銅,鉛,亜鉛には比較的乏しいものの,バリウム,砒素などを伴っていること,炭酸塩岩層は,一部マンガンに富んでいることがわかった。 これらのデータは,西黒沢期から女川期にかけて泥質岩の堆積環境において顕著な相違があったことを示しているように見える。イオウ同位体比に基づけば,女川期は,澱んだ還元的環境を示しており,この時期の日本海において,海洋無酸素事変(OAE)があった可能性を示唆している。詳細については,今後のデータおよび解析結果を待たねばならないが,これら海洋無酸素事変は,黒鉱鉱床などの金属鉱床の形成保存,石油鉱床の形成などにも極めて好都合であり,資源地質学的観点でのこの時期の特異性を説明できるものと思われる。今後は広範囲のデータをとるとともに,質を向上させ,より具体的な含金属頁岩の成因,生成環境の解明を目指したい。
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