1996 Fiscal Year Annual Research Report
極紫外領域における高励起分子イオンの生成・崩壊過程の研究
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07640666
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鵜飼 正敏 東京農工大学, 工学部, 助教授 (80192508)
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Keywords | 分子多電子励起状態 / 電離サテライト / シンクロトロン放射光 / 断片イオン質量分析 / 中性断片発光検出 / 同時計測 / 電子相関 / 窒素分子 |
Research Abstract |
光吸収に際しておよそ25eV以上のエネルギーが賦与されることにより生じる高エネルギー超励起状態である分子多電子励起状態は、類似した多電子的イオン状態である電離サテライト状態とともに、電子相関を伴う高励起状態の化学の新側面として重要である。本研究では、シンクロトロン放射光を用い、かつ最終崩壊後の断片イオンと中性断片からの発光との同時計測を行うことにより、このような分子高エネルギー励起状態の生成・崩壊過程についてのプロセス的に識別した観測手法を開拓することを目的として研究を行った。 平成8年度は平成7年度に改造・製作によって整備した飛行時間型質量分析器を用い、かつ本年度予算のほとんどを装置の整備と改良とに充当することにより装置系の最終的な整備を行いながら、水素、窒素等の2原子分子について、既に平成7年度に開始している予備的な研究結果を踏まえ、研究を行った。 窒素分子では解離前駆体である高励起イオンが、これまでほとんど知見が得られていない内側価電子放出に対応することが示され、その真空紫外発光と断片イオンとの同時計数信号の詳細な励起関数を測定するとともに、放射光の偏光軸に対する異方性を調べることを新たなテーマに組み込んで成功し、異なる対称性を持つ状態が生成することを明らかにした。これらは一電子的な高励起イオンと多電子的な解離状態との強い相互作用を示す結果である。これらの結果に対してより詳細な解離的イオン化励起過程を明らかにすべく、発光の分光観測実験を行い、同時計測信号には中性解離断片からの発光だけでなくイオン断片からの発光が多数存在することを確認し、解離前駆体イオンと解離過程の相関を明らかにした。また水素分子では1光子励起によって生成する1電子イオン化1電子励起イオン状態の解離が観測され、その詳細を明らかにすべく2次元同時計測スペクトルの取得に成功し、あわせてその解離断片イオンの運動エネルギー分析を行って解離過程の詳細を明らかにできた。 以上の通り本年度の計画をほぼ遅滞なく遂行することができた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] M.Ukai: "Spectroscopy and dynamics of superexcited molecules as probed by the fluorescence measurements" Journal of Electron Spectroscopy. 79. 423-428 (1996)
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[Publications] M.Kitajima: "Excitation function measurement of the dissociative photoionization excitation of nitrogen molecule utilizing the fluorescence photon-photoion coincidence technique" Journal of Electron Spectroscopy. 79. 467-169 (1996)
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[Publications] M.Ukai: "Dissociative ionization of O_2 in the vuv region studied by photoion kinetic energy spectroscopy" Journal of Electron Spectroscopy. 79. 471-474 (1996)
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[Publications] M.Kitajima: "One-electron and multi-electron transitions observed in the excitation function of the dissociative photoionization excitation of N_2" Journal of Physics B : Atomic,Molecular and Optical Physics. 29. 1711-1722 (1996)
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[Publications] K.Ito: "Dissociative photoionization of H_2 and D_2 in the energy region of 25-45eV" Journal Chemical Physics. 104. 8449-8457 (1996)
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[Publications] M.Ukai(分担): "Atomic and Molecular Photoionization" Universal Academy Press (Tokyo), 149-158 (1996)