1996 Fiscal Year Annual Research Report
近視野型時間分解蛍光分光法の開発とメゾスコピック領域の光反応制御
Project/Area Number |
07640690
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
玉井 尚登 関西学院大学, 理学部, 助教授 (60163664)
|
Keywords | メゾスコピック反応場 / 近視野型時間分解蛍光分光 / シングルフォトンタイミング / エバネッセント光 / 先鋭化光ファイバー / 全反射 |
Research Abstract |
光ファイバーチップと固体表面の間に挟まれた領域をメゾスコピック反応場として捉え、この領域の化学反応や緩和現象を時間分解して計測すると共に微小領域の光反応制御の可能性を探る事を目的として、ピコ秒の時間分解能と数十ナノメートルの空間分解能を合わせ持つ、近視野型時間分解蛍光分光システムの開発を試みた。 1.ピコ秒エバネッセント光誘起蛍光分光システム シンクロナス励起モード同期サブピコ秒色素レーザーを励起用光源とする、20〜30psの応答関数を持つシングルフォトンタイミングシステムを組み立てた。また、サファイアおよび石英プリズムを基板に用いて、全反射条件でレーザー光を入射することにより、エバネッセント光を励起光源とするピコ秒エバネッセント光誘起蛍光分光が可能であることを確認した。 2.近視野型時間分解蛍光分光システム 全反射型のエバネッセント光誘起蛍光分光法に面内方向の空間分解能を付与するために、先鋭化光ファイバーを用いる近視野型時間分解蛍光分光システムを作成した。倒立型顕微鏡に静電容量型ピエゾ素子を取り付け、モード同期Nd:YLFレーザーと先鋭化光ファイバーをカップリングさせ、試料面をnm精度でスキャンするシステムを設計した。シングルフォトンタイミングを検出法に用いて、時間分解能30ps以下、空間分解能300nm程度のシステムとした。 3.メゾスコピック領域の光ダイナミクス 100〜300nmの大きさを持つ蛍光色素をドープした種々の高分子微粒子の蛍光減衰曲線を計測し、100nmの微粒子においても蛍光ダイナミクスに殆ど差が無いことがわかった。また、石英基板に色素が吸着した系においては、二次元的に不均一な分布が存在し、蛍光ダイナミクスも場所ごとに異なる事が判明した。 以上のように近視野型時間分解蛍光分光システムを制作することにより、メゾスコピック領域の光ダイナミクスをピコ秒の時間解能で解析できるようになった。今後、空間分解能を上げると共に、光反応制御の可能性を探る事が課題である。
|