1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640692
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
川口 建太郎 国立天文台, 電波天文学研究系, 助教授 (40158861)
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Keywords | 赤外発光分光法 / 高分解能フーリェ変換分光 / エネルギー移動 |
Research Abstract |
発光分光法は可視紫外領域では高感度なスペクトル観測法として知られているが赤外領域では波長が長いために発光の遷移確率が小さくなり、主に二原子分子といくつかの三原子分子にしか適用されていない。本研究では高出力の炭酸ガスレーザー光をSF_6とN_2O混合ガスセルに導きN_2Oガスからの赤外発光を高分解能フーリエ変換赤外分光器で観測した。 高出力炭酸ガスレーザーとフーリエ分光器は現有の物を用いた。炭酸ガスレーザー励起を行うセルは本経費により新たに製作した。炭酸ガスレーザー10.6μmバンドのP(20)レーザー線(約960cm^<-1>)で励起されたSF_6はN_2O分子と衝突し、エネルギー移動により振動励起されたN_2Oが生成する。波数2000-2300cm^<-1>領域をフーリエ分光器で観測したところ多くの振動状態からの複雑な発光スペクトルが観測された。それらは(v_1,v_2,v_3)=(O,v_2,1)から(O,v_2.O)準位への発光に帰属された。基音(v_2=O)の解析により以下の結果から得られた。 1、回転エネルギー分布を各振動回転スペクトル線の強度(面積強度)から求めたところ、J>50では熱平衡に達していて回転温度は819(9)Kと決定できた。一方J<50以下では平衡に達していない(T=∞)。 回転の各運動量Jが小さなスペクトル線は二本に分裂して観測された。これは分子が大きな並進運動エネルギーを持っているためである。分裂幅より並進速度は480-1410m/sの範囲にあった。 3、N_2Oの振動・回転・並進運動のエネルギーの総和は最大8420cm^<-1>で少なくとも9個の炭酸ガスレーザーの光子が関与していることが分かった。 以上の結果は本発光分光法は衝突によるエネルギー移動の研究に有効である事を示す。今後熱分解化合物の検出などに応用する予定である。
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