1995 Fiscal Year Annual Research Report
金属イオン置換による硫黄架橋多核錯体の構造変換と異常結合の発現
Project/Area Number |
07640736
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今野 巧 筑波大学, 化学系, 講師 (50201497)
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Keywords | 硫黄架橋多核錯体 / 平面性金属イオン / 異常結合 / チオレート配位子 / 配位子転移 / 自然分晶 / 絶対配置 / 結晶構造 |
Research Abstract |
チオレート配位子(RS^-)を配位した八面体型単核錯体は、配位チオライト基の高い求核性により他の金属イオンと結合し、硫黄架橋多核錯体を形成する。これまで、Fe^<3+>やCo^<3+>など八面体性金属イオンとの反応では、単核錯体が二分子集合した直線型三型錯体が、一方、Zn^<2+>やCd^<2+>など四面体性金属イオンとの反応では、単核錯体が四分子集合したT-ケージ型八核錯体が得られている。本研究では、反応させる金属イオンを、これまで研究例のない平面性のPd^<2+>に変えることにより、新種の硫黄架橋多核構造の開発と異常結合の発現を追求した。 その結果、チオラト単核錯体fac(S)-[Rh(aet)^3]とNa^2[PdCl^4]またはPd(NO^3)^2との反応が、新規の硫黄架橋五核錯体を形成することを明らかにした。この錯体では、2つのPd原子が3つのRh八面体単核ユニットを連結している。興味深いことに、12あるaet配位子のうち1つがRh原子ではなくPd原子にキレート配位しており、この反応中におけるRh(III)からPd(II)への配位子転移が明らかとなった。さらに、Rh原子とPd原子を架橋している硫黄原子のほかに、2つのRh原子を架橋している硫黄原子も存在しており、通常みられない硫黄原子の架橋構造が見いだされた。この錯体の3つの単核ユニットの絶対配置は、ΔΛΔ/ΛΔΛとなっており、臭化物塩においては、自然分晶により光学活性体として単離することができた。このような多核金属錯体における自然分晶はきわめて珍しい例である。fac(S)-[Rh(aet)^3]の代わりにfac(S)-[Ir(aet)^3]を用いて反応を行ったところ、Rh^<III>_3Rd^<II>_2錯体に対応する錯体は、反応温度を上げてみても、ほんのわずかしか生成しなかった。これはIr(III)とaet配位子との結合がきわめて強く、配位子転移反応が起こりにくいためと考えた。このような立体化学的性質とともに、分光化学的性質についても明らかにした。
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