1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640748
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
篠原 厚 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60183050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 路明 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10011537)
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Keywords | パイ中間子原子 / パイ中間子水素原子 / バイオニックX線 / 気相実験 / パイ中間子転移 / 水原 / 炭化水素 |
Research Abstract |
負の粒子(π^-、π^-、...)は物質中で静止すると、その原子・分子に捕獲されエキゾチックアトムを形成する。この捕獲過程には物質の構造や電子状態(化学状態)が関与しているといわれており、実際、物質への捕獲現象で種々の化学的効果が現れる。中でも、水素に捕獲さ生成されるミュオン水素原子やパイ中間子水素原子(π^-p)は、物質中で擬中性子として奇妙な振る舞い(π^-やμ^-が他の原子に転移する)をする興味ある対象であり、中間子原子・分子現象の理解には重要なキ-プロセスである。 我々のグループでは、これまでπ^-捕獲率やバイオニックX線強度パターン等を種々の凝縮系の分子について系統的に測定し、化学効果の観点からそのメカニズムの解明に寄与してきた[ex.Phys.Rev.A,53,130 ('96) ; Phys.Rev.Lett,76,2460 ('96)]。本研究では,次のステップとして,π^-転移過程における化学構造やπ^-pの原子状態の影響を、分子間相互作用が無視できる気相系で明確に調べることにより、π^-pの遊離・生成から転移・崩壊の過程を含めた捕獲過程全体を理解することを目的とした。 実験は高エネルギー物理学研究所12GeV陽子シンクロトロンで行った。気体試料からのバイオニックX線を測定するために,ベリリウム製のカウンター内蔵高圧ガスチェンバーを開発した。チェンバーのテスト,測定システムの立ち上げはすでに完了し,現在,順調に測定実験を進めている。分子構造の観点からSF_6/C_2H_6/C_2H_4と水素との混合系について,励起状態の異なるπ^-pからの転移過程の検討のために希ガスとH_2及びCH_4系についてバイオニックX線とπ^0(→2γ)[最終的な水素への捕獲を示す]の同時測定を行う計画である。すでに,SF_6+H_2系では分子構造の転移過程への影響が,Ar+H_2系では転移過程によるバイオニックX線強度の変化が確認されている。測定は今夏までに終了の予定で,上で述べたような捕獲過程全体を理解するために重要なデータが得られると期待できる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] A.Shinohara: "Negative Pion Capture Process and its Chemical Effects in Some Hydrocarbons" Physical Review A. 53(1). 130-138 (1996)
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[Publications] A.Shinohara: "Selective Measurements of Pion Transfer Process in Alcohols and Carboxylic Acids by Using the Deuterated Compounds" Physical Review Letters. 76(14). 2460-2463 (1996)
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[Publications] A.Shinohara: "Behavior of Pionic Hydrogen Atoms in Liquid Organic Compounds" Hyperfine Interactions. 20(in press).