1997 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体の旋光度を決定する要因のX線構造解析による解明
Project/Area Number |
07640760
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Research Institution | School of Science, Kitasato Univrtsity |
Principal Investigator |
坂部 讓 北里大学, 理学部, 助手 (10050593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高柳 弘明 北里大学, 薬学部, 教授 (00050477)
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Keywords | 金属錯体 / 単結晶X線構造解析 / 不斉 / 旋光度 / 円偏光二色性 |
Research Abstract |
分子内に複数の不斉中心が存在する金属錯体においてそれらの不斉間に成立している相関関係の解明及び金属錯体分子内でキレート環を形成している配位子に不斉中心がある場合、金属錯体分子の示す旋光度や円偏光二色性等の光学的性質と金属錯体分子の構造との関係を明らかにするため中心金属に加え、配位子にも2種類の異なった不斉を持っているΛ-cis[Cr(CN)_2(S-pn)(R-pn)]Cl・H_2Oの合成を行った。この錯体の結晶性は非常に悪く単結晶化が難しく、本研究にとって必須である単結晶X線構造解析が行えなかった為、光学的性質等の間接的な証拠により上記の本研究の目的ついて推論してきた。そこで、本年度において多数の単結晶化法を試みた結果、アセトンと水の混合溶液の冷却により良質の単結晶が極少量得られた。この結晶を使って行った単結晶X線構造解析に成功した結果、現在まで全く明らかにされていない分子内に複数の不斉中心が存在する金属錯体が示す旋光度等の光学的性質に大きく関与している以下の関係を明にすることができた。(1)錯体分子内に存在する中心金属と配位子、配位子と配位子の不斉の寄与の間にはそれぞれかなり正確な加成性が成立していてその結果が錯体の示す旋光度や円偏光二色性となる。(2)Λ-cis[Cr(CN)_2(S-pn)(R-pn)]Cl・H_2Oの単結晶X線構造解析の結果そのS-pnとR-pnが形成している5員キレート環の配向は互いに異なっていたが上記(1)の関係が成立しており不斉中心を持つプロピレンジアミンが中心クロムに配位して5員キレート環を形成した場合、そのプロピレンジアミンの不斉に帰属されるべき旋光度寄与は5員キレート環のC-C軸の配向には影響されないことが判明した。さらに不斉クロムの旋光度寄与は5員キレート環を形成しているのがプロピレンジアミンであるかエチレンジアミンであるかに影響されないことも明らかになった。
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