1996 Fiscal Year Annual Research Report
配位原子のジオメトリーを制御した高選択的な配位子の分子設計
Project/Area Number |
07640803
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
梅谷 重夫 京都大学, 化学研究所, 助教授 (80160315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 正和 京都大学, 化学研究所, 教授 (90027037)
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Keywords | 分子設計 / 配位子 / 分離 / 溶媒抽出 / 選択性 / アルミニウム / ガリウム / インジウム |
Research Abstract |
β-ジケトン型抽出試薬によるAl^<3+>、In^<3+>の溶媒抽出においては、抽出試薬の崇高さ、配位酸素間距離が抽出挙動に大きな影響を与えることは昨年度既に報告した。本年度は4-位に崇高い置換基を有するアシルピラゾロン類による、13族金属イオン(Al^<3+>、Ga^<3+>、In^<3+>)の高選択的抽出分離機能について研究を行った。 1-フェニル-3-メチル-4-アシル-5-ピラゾロン類は強酸性の優れた抽出試薬であるが、5員環のヘテロ環構造を有するために、その配位酸素間距離は一般のβ-ジケトン類より長いことが分子軌道法計算により確認されており、In^<3+>(r=0.81Å)の抽出を阻害しない。さらに1-位のPh基、4-位のアシル基のために崇高い分子となっており、In^<3+>はAl^<3+>(r=0.51Å)よりはるかによく抽出される。Al^<3+>は4-位のRがCH_3のとき最も良く抽出されるが、Ph、2-naph、1-naphと崇高くなるに従って抽出は大きくアルカリ性側に移動し、In^<3+>との定量的分離が可能となった。アシルピラゾロン類のpKaはほぼ同程度であること、In^<3+>の抽出は置換基に大きく影響されないことから、Al^<3+>錯体中での配位子間接触が錯体の安定度を低下させ、抽出に大きな影響を与えていることは明らかである。1-naph基と2-naph基の効果は同程度であった。Ga^<3+>(r=0.62Å)はIn^<3+>よりイオン半径が小さいが、その抽出はIn^<3+>と同程度であった。またAl^<3+>の場合と同様にRが崇高くなるほど抽出性が低下することから、Ga^<3+>の抽出においても錯体内の配位子間接触が見られ、抽出を支配する重要な因子であると考えられる。In^<3+>では配位子の崇高さと抽出性に相関がないことから、錯体内配位子間接触は無視しうる程度であると考えられる。いずれの試薬においても、Ga^<3+>はAl^<3+>よりはるかに酸性側で抽出され、定量的抽出分離が可能である。 4-位にピバロイル基を有するものは、それと3-位のメチル基との立体的反発により、他のアシルピラゾロン類より配位酸素間距離が小さく、錯生成の際に金属イオンに応じて広がりにくい。このためIn^<3+>の抽出が大きく低下し、Al^<3+>の抽出に近づいた。この結果、Ga^<3+>をAl^<3+>、In^<3+>から定量的に抽出分離することが可能となった。 以上のように、アシルピラゾロン類による抽出系では、4-位の置換基の大きさによる錯体内配位子接触、配位酸素間距離を考慮することにより、抽出性をコントロールし、金属イオンを高選択的に抽出分離出来る配位子の設計が可能である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] D.Zhou: "Synthesis,Luminescent Properties and Langmuir Films of Four New Amphiphilic N-Hexadecyl Pyridinium Tetrakis(3-phenyl-4-benzoyl-5-isoxazolone)Lanthanide Complexe" Chem.J.Chinese Univ.17. 1828-1832 (1996)
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[Publications] L.Ying: "Excited State Properties and Intramolecular Energy Transfer of Rare-Eartl Acylpyrazolone Complexes" J.Phys.Chem. 100. 18387-18391 (1996)
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[Publications] T.Sasaki: "Improved Extraction-Separation of Alkaline Earths and Lanthanides with the Aid of an Ion Size Selective Masking Reagent" Analyst. 121. 1051-1054 (1996)
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[Publications] Q.Li: "Synthesis,Fluorescence Characteristics and Langmuir-Blodgett Film of a Green Strongly Fluorescent Terbium-Isobutyryl Pyrazolone Complex" Chem.J.Chinese Univ.17. 1016-1018 (1996)
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[Publications] O.Fujino: "Determination of Rare Earth Elements,Uranium and Thorium in Apatite Minerals by Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry" Nippon Kagaku Kaishi. 650-655 (1996)
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[Publications] S.Umetani: "Design of Novel β-Diketones of High Selectivity : Role of the Distance of the Two Donating Oxygens" “Value Adding through Solvent Extraction" Ed.D.C.Shallcross,R.Paimin and L.M.Prvcic,The University of Melbourne,Melbourne. 1. 347-352 (1996)