1996 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いたミトコンドリアの複製の制御機構の解析
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07640818
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松浦 悦子 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (00111691)
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Keywords | ショウジョウバエ / ミトコンドリアDNA / ヘテロプラズミ- / ミトコンドリア伝達 / ミトコンドリアDNAの複製 / A+T-rich領域 |
Research Abstract |
ショウジョウバエにおいて人工的に作成したmtDNAヘテロプラズミ-では、mtDNAの伝達が温度に依存して選択的におこる。本年度は、この温度依存性に関与する核遺伝子の同定、およびmtDNAの領域の特定を試み、昨年度の成果をあわせた解析を行って、以下の結果を得た。 (1)核遺伝子については、D.melanogasterの第2、第3染色体を同時に置換した系統とx染色体を置換した系統を確立し、選択的伝達の温度依存性に対するx染色体の効果を調べた。その結果、x染色体も温度依存性に関与することが示され、昨年度の結果をあわせると、数多くの遺伝子がmtDNA伝達の温度依存性に関与していることが示唆された。現在は、これらの遺伝子を同定するためにPエレメント挿入系統の確立を行っているが、さらに新たな戦略も必要であると思われる。 (2)mtDNA伝達の温度依存性はmtDNAの複製と関連すると考えられることから、in vitroでmtDNA複製の温度依存性を直接調べることを試みた。D.melanogasterの受精卵数gから、文献に基づいて粗抽出液を得て、複数の異なるDNAを鋳型としてDNA合成の活性を調べたが、充分な活性を得るには至らなかった。少量の卵から効率良くタンパク質を抽出すること、感度良くDNA合成活性を測定すること、などをさらに検討していきたいと考えている。 (3)D.simulansとD.mauritianaの各1系統について、mtDNA複製の起点を含むA+T-rich領域内の2つの領域、合計約2.3kbの塩基配列を決定した。この2系統はこれまでの伝達の実験に用いられ、コード領域はほとんど同一であることが分かっているが、mtDNAについても、調べた範囲では2系統間に塩基配列の違いがほとんどなく、伝達の温度依存性に関与すると推定できる塩基配列の特定はできなかった。A+T-rich領域の他の領域についても、さらに調べていく予定である。
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