1995 Fiscal Year Annual Research Report
分子進化速度の組織依存性:分子進化と形態進化の橋渡しへの試み
Project/Area Number |
07640819
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
隈 啓一 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10221938)
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Keywords | 組織特異的遺伝子 / 超遺伝子族 / 形態進化 / 分子進化 / 遺伝子重複 / 進化速度 / 機能的制約 / 中立説 |
Research Abstract |
平成7年度までに解析が終了したタンパクキナーゼ族、免疫グロブリン族以外に、ロドプシン族、チロシンホスファターゼ族、ニコチン性及びムスカリン性アセチルコリン受容体族、アルドラーゼ族、セリンプロテアーゼ族について、予備的な解析がほぼ終了した。その結果、やはり、脳で発現するメンバーは他の組織で発現するものより進化速度が遅いことが判った。例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体族には、主に脳で発現するものと、筋肉で発現するものが存在するが、両者の比較では、明らかに脳で発現するものの進化速度が遅い。また、予備的結果ではあるが、同じ脳・神経系で発現するものでも、脳(中枢)で発現するメンバーの方が、末梢神経で発現するものよりもさらに遅くなる傾向が見られた。 我々は既に、様々な組織が進化した脊索動物の初期進化において、組織特異的遺伝子の多様化が急速に起きており、その時期にアミノ酸の進化速度も上昇していたことを報告している。この理由を明らかにするために、11の超遺伝子族について、脊椎動物・節足動物の分岐以降〜魚類の出現まで(初期)と魚類の出現以降(後期)に分けてアミノ酸の置換パターンを比較したところ、どちらの時期についても、現在の標準的なタンパクの置換パターンとの間に有意な差は見られなかった。この結果は、初期においても、適応的なアミノ酸の置換は、起きたとしてもごく少数であり、ほとんどが、中立的なアミノ酸置換であったことを意味する。すなわち、この時期に観察される多くの遺伝子重複や進化速度の上昇は、機能的制約の緩和で説明できることになる。この結果については、日本遺伝子学会第67回大会にて報告した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yokoyama, N. et al.: "A giant nucleopore protein which binds Ran/TC4." Nature. 376. 184-188 (1995)
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[Publications] Iwabe, N. et al.: "Molecular clock for dating of divergence between animal phyla." Jpn. J. Genet.70. 687-692 (1995)
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[Publications] Toshima, J. et al.: "Identification and Characterization of a novel protein kinase, TESK1,specifically expressed in testicular germ cells." J. Biol. Chem.270. 31331-31337 (1995)
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[Publications] Iwabe, N. et al.: "Evolution of gene families and relationship with organismal evolution: Rapid divergence of tissue-specific genes in the early evolution of chordates." Mol. Biol. Evol.(印刷中).