1996 Fiscal Year Annual Research Report
分子進化速度の組織依存性:分子進化と形態進化の橋渡しへの試み
Project/Area Number |
07640819
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
隈 啓一 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10221938)
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Keywords | 組織特異的遺伝子 / 超遺伝子族 / 形態進化 / 分子進化 / 遺伝子重複 / 進化速度 / 機能的制約 / 中立説 |
Research Abstract |
平成8年度までに予備的な解析が終了した、タンパクキナーゼ族、免疫グロブリン族、ロドプシン族、チロシンホスファターゼ族、ニコチン性及びムスカリン性アセチルコリン受容体族、アルドラーゼ族、セリンプロテアーゼ族について、データベース中の配列増加に伴う、解析の更新を行なうとともに、残る12の遺伝子族について予備的な解析を行なった。その結果、脳で発現するメンバーは他の組織で発現するものより進化速度が遅いことが、より明確になってきた。例えば、幾つかの解糖系の酵素には、主として脳で発現するもの(脳型)、筋肉で発現するもの(筋型)、肝臓で発現するもの(肝型)があるが、この場合も、脳で発現するものの進化速度が遅い。また、筋型と肝型では、若干、筋型の方が進化速度が遅い傾向が見られた。 我々は、このような組織特異的遺伝子が、様々な器官・組織が生じた脊索動物の初期進化において多様化が急速に起きており、その時期にタンパクの進化速度も上昇していたことを予備的に報告していたが、26の遺伝子族を用いた詳細な解析を、岩部らとの共同研究で行なった。その結果、脊椎動物/筋足動物の分岐以降〜魚類の出現まで(初期:3億年間)と魚類の出現以降(後期:4億年間)に分けて、遺伝子重複の数を調べたところ、初期には63回の重複が観察されるのに対し、期間自体は、1億年長いにも関わらず、後期には18回しか遺伝子重複は観察されなかった。また、タンパクの進化速度についても、1つの遺伝子族を除いて、初期の方が進化速度は速く、2つの遺伝子族では10倍以上の進化速度の差が観察された(岩部ら、1996)。
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Research Products
(1 results)