1995 Fiscal Year Annual Research Report
コムギのミトコンドリアゲノムに構造変異を起こす核因子の遺伝的解析
Project/Area Number |
07640824
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
荻原 保成 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助教授 (40185533)
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Keywords | ミトコンドリアゲノム / 相同的組み換え / 構造変異 / 核因子 / ミューテーター / 発現調節 |
Research Abstract |
コムギの近緑野生種Aegilops crassaの細胞質(D^2)をもつパンコムギ農林26号[(cr)-N26]は短日条件下では可稔であるが、長日条件下では不稔となる日長感応性細胞質雄性不稔(PCMS)を示す。crassa細胞質に関する種々の組み合せの核-細胞質雑種コムギにおけるミトコンドリア遺伝子のRFLP分析を行ってみると、農林61号の核ゲノムをもつ(cr)-N61、およびEMS処理をしてえられたFR-mutantのcoxIII,orf25遺伝子の近傍に構造変異が検出された。このことはミトコンドリアゲノムに構造変異をおこす核因子の存在を示唆する。そこで、核細胞質雑種[(cr)-N61]の育成過程における変異体の出現を跡付けるため、(cr)-N26xN61の戻し交配過程、自殖後代における変異体の出現様式を調査した。まず、(cr)-N26,(cr)-N26,F1および戻し交配世代B1,B2,B3,B4,B5,F2,F3の個体より全DNAを抽出し、HindIII,Bg1IIで切断し、それぞれcoxIII,orf25をプローブにしてサザンハイブリダイゼーションを行い、パターンを解析した。F1個体では、(cr)-N26型を示したが、B1では、(cr)-N26型の変異型に変異しており、後代ではすべてこの(cr)-N26型であった。一方、自殖後代ではすべて、(cr)-N26型であり、変異型である(cr)-N61型は表れなかった。orf25をプローブにした解析でも、同様の結果がえられた。FR-mutantではミトコンドリアゲノムタイプはすべて母親型になり、変異がみられなかった。構造変異をDNAレベルで解析するため、coxIII,orf25遺伝子近傍の約20kbpについてmtDNAをクローニング、物理地図を作成し、変異領域を特定した。さらに、塩基レベルで解析するため、coxIII近傍領域約7kbp,orf25近傍領域約8bkpの塩基配列を決定した。crassa細胞質のorf25遺伝子のプロモーター領域の配列がrps7遺伝子の相同領域と組み換えを起こしていることが判明した。この再編成は転写単位の変換を示唆する。
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