1995 Fiscal Year Annual Research Report
寄主植物の多様性がゴール形成アブラムシの集団に与える進化的影響
Project/Area Number |
07640827
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋元 信一 北海道大学, 農学部, 助手 (30175161)
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Keywords | 自然選択 / 寄生 / アブラムシ / ゴール / フェノロジー / ハルニレ / 量的遺伝学 |
Research Abstract |
寄主植物のフェノロジー(芽吹き時期)の多様性に対してゴール形成アブラムシがどのような適応を示すのかを明らかにする目的で、寄主と寄生者両方のフェノロジーを調査した。寄主植物のハルニレは芽吹き時期の個体変異が大きく、2週間近いばらつきが生じていた。芽吹き時期の異なる複数の実験木を選び、これらの寄主に秋期に生みつけられた卵を実験室内で維持し、春に同一温度条件下で孵化を促した。寄主転換性の種では、各寄主の芽吹き時期とそこから得られた卵の孵化時期との間に有意な相関は得られなった。一方、非寄主転換性の種(ハルニレから移動しない)では、寄主の芽吹き時期と卵の孵化時期との間に有意な相関が見いだされた。 寄主の芽吹き時期と卵の孵化時期との非同調は、実際に寄主転換性アブラムシに対する強い選択要因になりうるか否かを明らかにするために、孵化直後の幼虫の移植実験を行った。この実験の結果、破約孵化した幼虫は早く芽吹く個体で、また遅く孵化する幼虫は遅く芽吹く寄主個体で、ゴール形成に成功しやすいことが実証できた。 本年度の2つの主要な研究目的については、予想通りの結果が得られた。第一に、同じ寄主植物を共有するアブラムシの中でも、寄主に対する適応のあり方は種によって大きく異なることが明らかになった。非寄主転換種では、移動性の低さのために、各寄主個体に対する局所的な適応を遂げることが可能であった。一方、寄主転換種では、移動性の高さから各寄主の個性に個別の適応を遂げることは不可能であった。第二点として、芽吹き時期と孵化時期とが同調していない場合には、アブラムシ集団は強い選択を受けるという点が明らかになった。このことから、アブラムシ集団では孵化時期に関して木ごとに異なる安定化選択を受けていることが示された。
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[Publications] T.Komatsu: "Genetic ditteventiation as a result of adaptation to the phenologies of individual host trees in the galling aphid kaltenbachiella japonica" Eclolgical Entomology. 20. 33-42 (1995)
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[Publications] S.Akimoto: "Coexistence and weak amensalism of congeneric gall-forming aphids on the Japanise elm" Researches on Population Ecology. 37. 81-89 (1995)