1995 Fiscal Year Annual Research Report
環境変動と生息地の分断化が群集構造に及ぼす影響についての数理的研究
Project/Area Number |
07640847
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Women's University |
Principal Investigator |
難波 利幸 大阪女子大学, 学芸学部, 教授 (30146956)
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Keywords | 分断化 / パッチ状環境 / 絶滅 / 反応拡散方程式 / ロトカーボルテラ系 / 保護区 |
Research Abstract |
生息地が分断化されパッチ状になることによる野生生物の絶滅や生物多様性の減少が心配されている。本研究では,パッチ状環境における植食者-植物系の存続可能性がパッチの質や空間配置にどのような影響を受けるかを,数理モデルを用いて解析した。パッチ内ではロジスティック成長する植物を植食者が食べるとし,摂食はロトカーボルテラ型であるとした。パッチ間を移動できるのは動物だけであるとし,パッチ間移動は密度差に比例して起こる拡散型であると仮定した。バッチの質を記述するパラメータとして植物の環境収容力を用いた。好適なパッチでは単独でも植食者-植物系は存続するが,不適なパッチにおいては他のパッチからの移入がなければ植食者が滅びるとし,パッチの配置や植食者の移動率が系の存続にどのように影響するかを調べた。パッチの配置については,(A)中央に好適なパッチが1つ存在し,これをとりまく不適なパッチとの間で移動が起こる場合と,(B)好適なパッチを端に不適なパッチがいくつか直線的につながり,隣り合うパッチ間で移動が起こる場合の二通りを扱った。系が存続するためには,不適なパッチでの環境収容力に対する好適なパッチの環境収容力の比が充分大きくなければならない。二つの空間配置パターンのどちらの場合にも不適なパッチの数が増えるとともに植食者の存続は難しくなる。パッチの数が同じときは,(B)の好適なパッチが端にある直線型の方が植食者が存続しやすいことが分かった。さらに,移動率が小さいと,不適なパッチの数が(A)より多くても(B)の方が存続しやすい場合がある。このことは,移動率が小さいときにはパッチの数よりも空間的な配置のパターンが重要であることを意味する。この結果は,保護区の設置の仕方を考える基礎となることが期待される。
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