1995 Fiscal Year Annual Research Report
化学的防御が発達したウマノスズクサと植食性昆虫の相互作用の解析
Project/Area Number |
07640848
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
鈴木 信彦 長崎県立大学, 経済学部, 助教授 (80183846)
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Keywords | ウマノスズクサ / ジャコウアゲハ / 動植相互作用系 / 個体群変動 / 被食圧 / 補償作用 |
Research Abstract |
1.野外自然個体群におけるウマノスズクサのバイオマスとそれを利用するジャコウアゲハの個体数の季節的変動を調査し、以下の結果が得られた。(1)ジャコウアゲハ越冬世代の個体数は非常に少ないが、豊富な資源によって個体数は激増し、ウマノスズクサの食い尽くしが生じる。(2)その後、食い尽くされた植物の再成長と被食により地上部消失と地上部展開を繰り返す。(3)その結果、ジャコウアゲハの個体群サイズは資源量によって大きく規定されていた。(4)ジャコウアゲハの越冬前の個体数激減により、早春のウマノスズクサのすみやかな成長が可能となり、少なくとも短期的には相互作用系が維持されていた。 2.被食によるウマノスズクサの地上部消失を仮定した切除実験を行い、被食および補償作用がウマノスズクサの年間同化産物におよぼす影響を評価し、以下の結果が得られた。(1)地上部刈り取り後、地上部は再成長によってすみやかに回復し、地下部根系量も地上部回復による同化産物の転流によってすみやかに回復した。したがって、ウマノスズクサは被食に対する高い補償能力をもつことが明らかとなった。(2)年間の葉量積算値は、8月1回、6月1回、6,8月2回刈り取りの順で少なくなったが、年間の地下部成長量は刈り取りの影響を受けなかった。(3)刈り取り後の再成長で展開してきた新しい葉は刈り取りを受けなかった古い葉より光合成能力が高く、被食された場合、その後再成長してきた地上部の単位葉量あたりの同化速度が高く、単位葉量あたりの地下部成長量が大きくなったことが示唆された。 3.ジャコウアゲハ幼虫の植物体茎部の環状剥皮行動の意義について、植物の誘導防御阻止および植物の栄養低下阻止の仮定の基に実験的解析を行い、現在化学分析中である。 4.ジャコウアゲハとホソオチョウの飼育実験により、生物経済学的基礎データを収集した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Suzuki,N.,T.Okuda and H.Shinbo: "Sperm precedence and sperm movement under different copulation intervals in the silkworm,Bombyx mori(Lepidoptera:Bombycidae)." Journal of Insect Physiology. 42. 199-204 (1996)
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[Publications] Matsumoto,K.and N.Suzuki: "Swallowtail Butterflies:Their ecology and Evolutionary Biology (J.K.Scriber,Y.Tsubaki and R.C.Lederhouse eds.)" Scientific Publishers,Inc.,Gainesville,FL., 459 (1995)
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[Publications] 鈴木信彦: "昆虫生物学(小原嘉明 編)" 朝倉書店, 201 (1995)