1995 Fiscal Year Annual Research Report
個葉形質に基づく温帯林植物群集の生理生態的構造の研究
Project/Area Number |
07640849
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
横井 洋太 北里大学, 一般教育総合センター, 教授 (90007758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 剛 北里大学, 一般教育総合センター, 助手 (60205747)
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Keywords | ブナ林 / 光合成 / 気孔伝導度 / クロロフィル蛍光 / 比葉面積重 / 葉面積 / 生育環境 |
Research Abstract |
本年度は、まず、研究の基礎的調査として、個葉の諸形質が季節および生育環境の違いに対して示す変化の特徴を把握するために、冷温帯域の代表的樹種であるブナを材料にして、開葉期全体にわたる経時的調査および個体群内の変異幅の調査を、丹沢檜洞丸のブナの二つの林分について行なった。二つの林分のうち一方は近年著しく枯損衰退が目立つ山頂付近南東斜面の林分であり、他方は一見健全な状態を保っている山頂付近北東斜面の林分である。この二つの林分は連続をしており、一つのメタポピュレーションに属すと見做される。 調査結果は、単位面積当たりの光合成や蒸散速度、およびクロロフィル蛍光特性などの諸機能的形質には両林分間で差がなく、季節や年々の環境に対応して、その個体群固有の状態を示すことが示唆された。一方、個葉の面積、厚さ、比葉面積重などには林分内で大きな変異があり、葉面積は北東斜面で有意に大きな傾向も見られた。また、昨年に行なった調査では、機能的形質が、枯損木で健全木より悪い状態になることが見られたが、本年の調査では、枯損の程度と各葉形質との間には有意な関係は見られなかった。これらの結果は、葉の機能的形質と形態的形質の安定性や変異性についての検討・考察に有用な資料となる。また、来年度の研究の予備的調査として、暖温帯落葉性二次林林床に存在する十数種の大本の個葉の形質の環境反応性を特に気孔伝導度を中心に調査した結果、気孔伝導度の環境反応性が種によりかなり異なる結果が得られ、森林群集構成種を生理生態的な見地からいくつかの種型に纏め得る可能性が示された。これらの結果については現在解析を続けている。
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