1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640854
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 忍 筑波大学, 生物科学系, 講師 (70196236)
|
Keywords | 細胞壁 / 細胞接着 / 多糖 / ペクチン / カルス / アラビノース |
Research Abstract |
多細胞生物である高等植物の形態形成においては、細胞自身の分化に加えて、分化した細胞同士の相互作用や空間的配置が重要であると考えられる。細胞間相互作用の研究が進んでいる動物や粘菌類と異なり、高等植物の細胞表層を特徴づける構造には細胞壁があり、その主成分である多糖類の機能が注目される。現在までに細胞同士の接着に関わる多糖としては酸性多糖の一種であるペクチンが考えられているが、その分子機能は言うに及ばず、構造に関しても未知の部分がほとんどであると言っても過言ではない。このような研究の現状を打ち破るためには、ペクチン様多糖の構造に変化の生じた結果、細胞同士の接着性や形態形成現象に異常の生じた様なミュータントの作出と、その解析が極めて有効であると考えられる。 われわれは10年以上にわたってニンジン培養細胞を用いて形態形成、特に不定胚形成機構の解析を行ってきた。その過程で得られた、形態形成能力を失った細胞株では細胞間の接着性が弱まり、極めて小さい細胞塊しか形成し得ないことを見い出した。この細胞株と、通常の形態形成能力を有し、強い接着性を示す細胞株における細胞壁多糖の構造を比較検討することは、高等植物の細胞接着に関わる多糖の機能解明に大きく寄与することが期待される。 材料として、ニンジン培養細胞の細胞間の接着性が強く大きな細胞塊を形成するembryogenic callus(不定胚形成能力を有するカルス)、それから誘導された不定胚、細胞間の接着性が弱く細胞塊を形成しないnon-embryogenic callus(不定胚形成能力を持たないカルス)を用い、その細胞壁から多糖を抽出し、セルロースアセテート膜電気泳動による分析を行った。その結果、embryogenic callusのペクチンには、中性糖がより多く含まれることが明かとなった。そこで、スポットの部分から、多糖を抽出し、糖組成を調べたところ、アラビノースの含量に大きな差があることが判明した。
|