1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640883
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
常木 和日子 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10127459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 一男 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00193475)
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Keywords | 神経冠 / 円口類 / 硬骨魚類 / 細胞外基質 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
1.脊椎動物胚に特有の神経冠細胞は、神経管背側より出現して体内各所へ移動し、種々の細胞に分化する。またそれにより、脊椎動物の体制構築にも係わっていると考えられる。本研究では、まず最も原始的な体制を示す脊椎動物である円口類のスナヤツメの胚において、その神経冠細胞の移動パターンを、この細胞を染める単クローン抗体HNK-1を用いて免疫組織化学的に明らかにした。 (1)スナヤツメ胚の胴部では神経冠細胞は、表皮と体節の間を通るdorsolateral pathway、体節と神経管の間を通るventral pathway、および背鰭原基中へ向かうdorsal pathwayの3つのルートに沿って移動する。ただしventral pathwayでは脊索より下方へは移動しないが、これは円口類において交感神経幹がないことと関連していると思われる。またdorsal pathwayへ移動した神経冠細胞は、背鰭の結合組織に分化すると考えれる。 (2)スナヤツメ胚の神経管中に存在するdorsal cellがHNK-1で染色される。また皮下にもHNK-1陽性の神経繊維網があり、それらの少なくとも一部はdorsal cellの突起である。スナヤツメでは感覚性の脊髄神経節が極めて小さいので、dorsal cellは移動しなかった「神経冠細胞」から分化したものとも考えられる。これらの観察結果は、神経冠ないしプラコードの起源と考え合わせて興味深い。 2.硬骨魚類のソードテ-ルの胚において、HNK-1および細胞外基質に対する抗体による免疫組織化学的観察を行った。 (1)ソードテ-ル胚の胴部では、HNK-1染色によりスナヤツメ胚と同様に神経冠細胞の3つの移動ルートが認められる。この内、ventral pathwayを通る神経冠細胞は脊索の下方へと移動し、交感神経細胞に分化する。 (2)ファイブロネクチンおよびコンドロイチン硫酸の出現と分布が、HNK-1陽性神経冠細胞の移動パターンと関連していた。このことは、硬骨魚類においてもこれらの細胞外基質が神経冠細胞の移動と密接に関連していることを示している。
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