1995 Fiscal Year Annual Research Report
カイコの卵エクジステロイドの生理作用と作用機構の解析
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07640889
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
園部 治之 甲南大学, 理学部, 教授 (20068133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 隆 甲南大学, 理学部, 助教授 (60268513)
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Keywords | ステロイドホルモン / 脱皮ホルモン / エクジステロイド / カイコ / 胚発生 |
Research Abstract |
カイコ卵におけるエクジステロイドの生合成と代謝を解析するために,エクジステロイド生合成系の前駆体であるcholesterol,中間体であるketodiol (2,22,25-trideoxyecdysone)およびecdysone,それぞれの放射性ラベル体を卵へ注入し,その代謝産物をHPLC-ラジオアナライザー系で分析,定量した.その結果,cholesterolはketodiolおよび20,26-dihydroxyecdysoneへ,またketodiolは25,22,2,20,26位が水酸化された.さらに,ecdysoneは20-hydroxyecdysoneを経由して3-epi-20,26-dihydroxyecdysoneへ代謝された.このような結果から,カイコ卵ではcholesterolからecdysoneを経由して20-hydroxyecdysoneへのde novo合成系が備わっていることが明らかとなった.今回の実験は,前胸腺以外の組織(器官)でエクジステロイドのde novo合成系が存在することを直接証明した初めての例である. さらに,休眠卵と非休眠卵でエクジステロイドの生合成と代謝を比較したところ,前者ではエクジステロイドが抱合型(リン酸エステル)となり,後者では20-hydroxyecdysoneの合成の方向へ代謝が進むことが明らかとなった.エクジステロイドのリン酸エステルは不活性型であり,20-hydroxyecdysoneはこれまでカイコで見いだされたエクジステロイドでは最も生理活性が高い化合物である.そこで,20-hydroxyecdysone合成系の酵素の一つであるecdysone-20-monooxygenaseに焦点をしぼり休眠卵と非休眠卵での活性を比較することにした.これまでカイコにおいてはecdysone-20-monooxygenase活性の測定例がないことから,まず酵素の測定法の検討から実験を開始した.その結果,本酵素はmicrosomeに局在し,NADPHを補酵素とするcyt. P450の一種であり,休眠卵に比べ非休眠卵で活性が高いことが明らかとなった.これらの結果は,ecdysone-20-monooxygenase活性の発現と胚発生の進行とは密接に関連していることを示唆している.
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[Publications] Y. Mamiya et al.: "Occurrence of 3-epi-22-deoxyecdysone and its phosphoric ester in the diapause eggs of the silkworm, Bombyx mori." Experientia. 51. 363-367 (1995)
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[Publications] M. Ikeda et al.: "Charge-remote fragmentation of ecdysteroids conjugated with phosphoric acid." Mass Spectrometry. 9. 1480-1483 (1995)
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[Publications] 勘場麻里ら: "カイコの休眠卵に見いだされた未同定エクジステロイド,特に3-エピエクジステロイドの精製と構造解析について" 日本蚕糸学雑誌. 64. 333-343 (1995)
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[Publications] 園部浩之(編集,および分担執筆): "昆虫の生化学・分子生物学" 名古屋大学出版会, 498 (1995)