1995 Fiscal Year Annual Research Report
『周生期ラットの脳内に出現するエストロゲン受容体の生物学的な意義』
Project/Area Number |
07640893
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
林 しん治 (財)東京都神経科学総合研究所, 解剖発生学研究部門, 副参事研究員 (20076996)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 助手 (20270671)
横須賀 誠 (財)東京都神経科学総合研究所, 解剖発生学研究部門, 研究員 (90280776)
|
Keywords | エストロゲン受容体 / 性分化 / アロマターゼ / 免疫組織化学 / 遺伝子発現 / 顔面神経核 / 視覚野 / ラット |
Research Abstract |
脳の性分化に関連する3つのタンパクである、アンドロゲン受容体・エストロゲン受容体・アロマターゼの脳内分布について遺伝子発現とタンパクの出現との両面から解析を行った。エストロゲン受容体の出現の形式には胎生期から新生仔期に限って一過性に出現する例(顔面神経核内側亜核・大脳皮質第一次聴覚野)と、新生仔期に出現する脳内領域に成熟後も検出される例(視床下部内諸核・視束前野・扁桃体・中脳灰白質等)の2種類に分けられることが明らかになった。エストロゲン受容体とアロマターゼの免疫組織化学を併用することによって、後者の領域にはアロマターゼが存在するが、前者の領域にはアロマターゼは検出されなかった。また、ラットの胎生期から新生仔期にかけて雄動物の精巣が分泌するアンドロゲンは、アロマターゼの働きによって転換されたエストロゲンによって引き起こされると考えられるので、脳の性分化が生じる脳内部域は後者の領域であることが示唆された。さらに、エストロゲン受容体はそのリガンドであるエストロゲンによって一般に抑制的調節を受けていることが知られているので、エストロゲン投与後のエストロゲン受容体の変化を免疫組織化学によるタンパクを検出し、またインシチュウハイブリダイゼーション組織化学(ISHH)および逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)を用いて遺伝子発現の量を検討することによって、この両者が並行的に推移するかどうかを解析した。タンパク量の変化と遺伝子発現とは視床下部正中基底部では並行的であったが、視束前野では、エストロゲン投与によってタンパクは減少していたが遺伝子発現にはほとんど変化が見られなかった。この現象は、エストロゲンが脳に作用して神経内分泌調節を行う際に、その脳内領域によって、受容体発現に対する異なる調節機構が働くことを示唆している。
|
-
[Publications] Tsuruo, Y., Ishimura, K., Hayashi, S. and Osawa, Y.: "Immunohistochemical localization of estrogenreceptors within aromatase-immunoreactive neurons in the fetal and neonatal rat brain." Anat. Embryol 193(1996) 115-121.193. 115-121 (1996)
-
[Publications] Orikasa, C., Yokosuka, M., and Hayashi, S: "Expression of estrogen reeptor in the facial nucleus is suppressed by estradiol, but not by testosterone, indicating a lack of requirement for aromatization." Brain Res., 693(1995) 112-117.693. 112-117 (1995)
-
[Publications] Yokosuka, M., Okamura, H. and Hayashi, S.: "Transient expression of estrogen receptor-immunoreactivity (ER-IR) in the layer V of the developing rat cerebral cortex." Dev. Brain Res, 84(1995) 99-108.84. 99-108 (1995)