1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640898
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
最上 善広 お茶の水女子大学, 理学部・生物学科, 講師 (30166318)
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Keywords | 繊毛 / 運動周期 / 逐次測定 / ゆらぎ / フラクタル性 / 神経 / 粘性負荷 / 二枚貝 |
Research Abstract |
繊毛打周期の変動の時間経過を解析するために、ムラサキイガイの鰓繊毛(largeabfrontal cilia)を用いて、数千回にわたる繊毛打の周期を逐次測定する方法を開発した。各繊毛打毎の周期変動には、フラクタル構造が認められ、この周期列の自己相関をとってフーリエ解析し、パワースペクトルを求めたところ、特定の周波数成分の存在を示すピークは検出されなかった。このことから、繊毛打の周期変動には明らかに不規則で予測不可能な「ゆらぎ」が存在することが示唆された。 生体が運動の安定性をコントロールする上で、ゆらぎとその修飾が重要な役割を果たしていると考え、その性質を解明し、より深く生体運動の仕組みを理解するために、外界からの入力で対する繊毛運動周期のゆらぎの変動を調べた。 プレパレーションを浸している外液を灌流し、人工海水から実験液に交換することで、神経伝達物質および、粘性負荷の繊毛打周期に対する効果を解析した。この結果、セロトニンによって周期の平均が短くなるだけでなく、最頻領域近傍のデータ点の減少と周期の頻度分布の最頻領域への集中が起こり、全体としてゆらぎが減少することがわかった。また、粘度を高くして繊毛に力学的負荷を加える条件でも、セロトニンの場合と同様のゆらぎの減少がみられ、この効果はある範囲の粘度で、粘度の上昇にともなって高まった。さらに、これらの効果は可逆的であり、外液を再び人工海水に戻すことで、繊毛打周期はもとのゆらぎを回復した。 このようなセロトニンや粘性負荷による繊毛運動のゆらぎに対する修飾は、二枚貝の鰓における、フィルターフィーディングの際の神経支配による繊毛打の安定化と外力負荷に応じた出力の調節を示唆している。
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[Publications] Mogami,Y.,Yamashita,M.(他3名): "Early emnryogenesis of amphibians in space;AstroNewt for the space embryology in IML-2 and SFU." Adv.Astronaut.Sci.Ser.(in press). (1996)
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[Publications] 山下雅道・黒谷明美・今溝真理・最上善広・小池 元・浅島 誠: "SFUでのAstroNewt実験:射場及び軌道上運用." 宇宙利用シンポジウム. 12. 16-19 (1995)
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[Publications] 三輪五十二・最上善広・馬場昭次・高橋三保子・高木由臣: "宇宙空間における生態寿命の変動-概日リズム周期との関係." 宇宙利用シンポジウム. 12. 31-33 (1995)
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[Publications] 最上善広・石井淳子・馬場昭次: "ゾウリムシは重力を感じているか-ゾウリムシの重力走生のメカニズム." 宇宙生物科学. 9. 17-35 (1995)
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[Publications] 藤枝修子・最上善広・馬場昭次・柴田文明・荒磯恒久: "フェロインを触媒とするベロ-ゾフ・ザボチンスキー反応の空間的化学振動挙動における無重力場の影響." 宇宙利用シンポジウム. 12. 207-210 (1995)