1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640907
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
江口 英輔 横浜市立大学, 理学部, 教授 (90046003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蟻川 謙太郎 横浜市立大学, 理学部, 助教授 (20167232)
西村 顕治 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (80041846)
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Keywords | 深海 / 複眼 / リン脂質 / フォスファチジン酸 / 脂肪酸 |
Research Abstract |
海では100m毎に1/30ずつ明るさが減少し、10m毎に一気圧ずつ水圧が増加する。変温動物において、膜機能は環境の変化に対して維持されなければならないが、これは生体膜を構成する膜脂質の主要素、リン脂質、殊に脂肪酸の組成を変化させることで、膜の流動性を保ち達成していると言われている。タカアシガニ(Macrocheira kaempferi)は、一属一種のカニで、日本沿岸の特産であり、全節足動物の中で世界最大の動物であるが、生態学的にもまだ分からないことが多いやや深海性(50〜300m)のカニである。本研究では、タカアシガニ複眼の、膜の生化学的特徴と形態学的特徴を調べ、浅海性のイソガニと比較することで、タカアシガニの生息環境との関係を考察した。 その結果、電子顕微鏡観察から、タカアシガニの複眼は薄暗い海底に肥大する方向で適応していることが分かった。また、U/S ratio(不飽和脂肪酸量/飽和脂肪酸量)が、イソガニもタカアシガニも同じ3.0前後であったことから、タカアシガニの生息している水温が、黒潮の影響で一年を通して16〜19℃という比較的高い水温であることによると思われる。今回の実験では予期せず、一般に動物組織の脂質組成では1%以下の微量成分であるフォスファチジン酸が、タカアシガニでは5〜12%、イソガニでは強い光(2000lux)で飼育した方に6.4%と多量に検出された。フォスファチジン酸と他のリン脂質との脂肪酸組成の比較から、フォスファチジン酸がPhospholipase Dにより生成されたと仮定した場合、強い光があたる前に存在する微量のフォスファチジン酸はフォスファチジルイノシトール由来であり、強い光が長くにあたった際、多量にできたフォスファチジン酸はフォスファチジルコリン由来のものであるだろうということが推測される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 坂本克彦: "Two opsins from the compound eye of the crab,Hemigrapsus sangiuneus." J.Exp.Biol.199. 441-450 (1996)
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[Publications] Peter Walla: "Spectral sensitivity of single photoreceptor cells in the eyes of the ctenid spider Cupiennius salei Keys." Zool.Sci.13. 199-202 (1996)
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[Publications] 柏木孝仁: "Fatty acid composition and ultrastructure of photoreceptive membranes in the crayfish Procambarus clarkii under conditions of thermal and photic stress." J.Comp.Physiol.B.(印刷中).
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[Publications] 江口英輔: "Compound eye fine structure in Paralomis multispina,an anomuran halfcrab from 1200 m depth (Crustacea ; Decapoda ; Anomura)." Biol.Bull. (印刷中).
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[Publications] 島崎由美子: "Effect of formoguanamine on structure and function of the compound eye of the butterfly,Papilio xuthus." Zool.Sci.14. 29-35 (1997)