1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640914
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Research Institution | Science University of Tokyo |
Principal Investigator |
久田 光彦 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (70000768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 志郎 東京理科大学, 基礎工学部, 助教授 (80156819)
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Keywords | フタホシコオロギ / 成虫脱皮 / 配偶行動 / 雌雄識別 / キチン硬化 / 攻撃性 / 接触フェロモン / 誘引歌 |
Research Abstract |
フタホシコオロギ、Gryllus bimaculatusは成虫脱皮後、日を追って活動性を高め、これにともなって行動も次第に変化する。なかでも配偶行動には、雌雄それぞれに特徴的な変化が見られる。この詳細から、成虫の生理生化学的な特質が明かに出来る。ここでは特に雌雄識別の問題について注目して羽化後の成熟過程を明かにした。 1.雄の誘引歌および雌の応答発達過程: 雄は発音器である翅のキチン質が適切に硬化するのを待ち、ほぼ24時間後、断片的な発音から始めて次第に完全な4ないし5シラブルからなる完全な誘引歌を歌えるようになる。この間、誘引歌の基本周波数は3ないし4kHzから5.7kHz程度まで次第に上昇し完成する。雌はこの完成した誘引歌に脱皮直後から応答する。雄誘引歌の周波数変化は膜状の翅のキチン硬度変化を反映していることが明らかになった。 2.雌雄識別メカニズムとその発達: 雄の誘引歌に引き寄せられた雌は、停止して音源に定位して歩みだし、再び停止して定位を繰り返し歩行に移ることで次第に雄に接近する。数センチメートルに接近後は視覚によって定位することが実験から明らかになった。さらに接近すると最終的な雌雄識別が行われる。このとき雌雄は触角を相互に接触させる。ここでは雌の触角上に分泌された接触フェロモンが雄の触角の化学感覚器によって受容され雌が確認されることが証明された。 この実験の過程で、他個体から隔離して飼育された雄個体はきわめて攻撃性が高く、配偶行動も満足に完遂できないことが発見された。成虫の行動形成には他個体との接触経験が必要であった。この経験として、触角を通じての他個体との接触が重要であることも明らかに出来た。この問題の追求性は社会的行動の発達過程の研究として重要であると考える。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 久田 光彦: "大学で教えるべきこと(1)-生物未履修者への生物実習-" 比較生理生化学. 12/2. 199-202 (1995)
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[Publications] 久田 光彦: "大学で教えるべきこと(2)-生物未履修者への実習実例-" 比較生理生化学. 12/3. 292-298 (1995)
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[Publications] Hisada,M.: "Song Development after the Final Molt in the Cricket,Gryllus bimaculatus." Nervous Systems and Behaviour,Proc.4th ICN. 4. 372 (1995)
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[Publications] Namba,H.: "Descending Modulation of Nonspiking Local Interneuronesin the Terminal Abdominal Ganglion of the Crayfish." Nervous Systems and Behaviour,Proc.4th ICN. 4. 459 (1995)
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[Publications] 久田 光彦: "動物の行動とその神経機構" 北海道歯学雑誌. 18/1. 62 (1997)
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[Publications] 久田 光彦: "基礎工学実験" 東京理科大学, 7 (1997)