1996 Fiscal Year Annual Research Report
プロラクチンの魚類色素胞に対する直接作用と体色変化における役割
Project/Area Number |
07640915
|
Research Institution | Toho University, Faculty of Science |
Principal Investigator |
大島 範子 東邦大学, 理学部, 教授 (70057735)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 雅純 東邦大学, 理学部, 講師 (20235899)
藤井 良三 東邦大学, 理学部, 教授 (10045354)
|
Keywords | 魚類 / 赤色素胞 / 黄色素胞 / プロラクチン / 婚姻色 / 色素顆粒拡散 / サイクリックAMP / 体色 |
Research Abstract |
本年度は数種の魚種から赤・黄色素胞を分離、培養し、プロラクチンの色素顆粒拡散作用が魚類に一般的な現象であることを確認した。さらに、こうした作用と、婚姻色との関連を探るために、赤・黄色素胞のプロラクチンに対する反応性に季節的な変化があるかどうかを調べた。野外で飼育したティラピアの赤色素胞は7〜8月に最も高い拡散度を示し、11月には0〜20%の低い反応しかみられなかった。黄色素胞は7〜8月に最もよく反応するものの、他の時期にもある程度の高い反応が観察できた。また、室温が年間を通じて約25℃に設定されている室内飼育のタイリクバラタナゴの赤・黄色素胞は、季節を問わずよく反応した。この条件下では、赤い婚姻色が一年中次々に発現した。同じく、室内飼育のゴクラクハゼ(赤い婚姻色は発現しない種)の赤・黄色素胞も年間を通して反応した。これらの結果から、プロラクチンは通常の体色発現にも、赤・黄色素胞を拡散させるという効果で関与しているが、繁殖期、赤い婚姻色の強調に重要な役割を果たすものと推察される。そこで、プロラクチンの血中レベルを調べた。淡水中で飼育されたティラピアのプロラクチン濃度はPRL_<177>が55.7ng/ml、PRL_<188>が3.2ng/mlであった。PRL_<177>が拡散作用を示し、PRL_<188>は無効であることが昨年度の研究でわかっているので、前者のレベルが高いという結果は、実際にプロラクチンが体色に関与している可能性を支持するものである。婚姻色発現個体については未測定で、引き続き実験する予定である。一方、プロラクチンと男性ホルモン(アンドロゲン)を1日おきに2週間、ティラピアに腹腔内注射したが、婚姻色発現には至らなかった。複雑な調節系が予想される。プロラクチンの細胞内情報伝達系を検討したところ、セカンドメッセンジャーはサイクリックAMPであり、アデニル酸シクラーゼの活性化を介していることがわかった。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] Oshima,N.: "Pigment dispersion by prolactin in cultured xanthophores and erythrophores of some fish species." The Journal of Experimental Zoology. 275. 45-52 (1996)
-
[Publications] Oshima,N.: "Signal transduction of MCH in melanophores of the tilapia,oreochromis niloticus." Zoological Science. 13. 351-356 (1996)
-
[Publications] Hayashi,H.: "The endothelin receptors that mediate aggregation of pigment in fish melanophores." Comparative Biochemistry and Physiology. 115B. 143-152 (1996)
-
[Publications] Goda,M.: "Biology of the chromatophores of the ice goby,Leucopsarion petersi." Zoological Science. 13. 783-794 (1996)
-
[Publications] Sugimoto,M.: "Regulation of melanophore responsiveness in the background-adapted medaka,oryzias latipes : changes in the intracellular signalling system." Comparative Biochemistry and Physiology. (in press). (1997)