1995 Fiscal Year Annual Research Report
クロショウジョウバエ区の系統分類学・進化遺伝学的研究
Project/Area Number |
07640920
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡部 英昭 北海道教育大学, 教育学部・札幌校, 教授 (10167190)
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Keywords | ショウジョウバエ / クロショウジョウバエ区 / 進化遺伝 / 系統関係 / 染色体 |
Research Abstract |
暖温帯域の野外調査でヨツゲショウジョウバエ(以下和名についてはショウジョウバエを省略)種群の新種が得られた.既知種についてもオオクロ種群のトビクロとトウヤが最も広範囲に分布していること,カラス種群のキボシは暖温帯域では800m以上の標高に遺存的に分布していること,クロ種群はむしろ冷温帯域で適応放散をとげ北欧や北米に広がっていったことなど,クロショウジョウバエ区の適応進化を考える上で多くの重要な情報が得られた.さらに中国雲南省から報告されているカワオオクロは国内では九州から本州北部まで分布する日華区要素種であり,津軽海峡が分布の北限バリアーになっていることも明らかになった. 外部形態と生殖器構造の比較では,ヨツゲ種群はオオクロ種群とオオクロ群種のラウス種亜群と,カラス種群はトビクロ種亜群と類縁関係がある結果が得られた. 核型分析ではラウス種亜群の種は2n=12(2R+3V+1D)の染色体構成であり,このことは本亜群は同じオオクロ亜群のほかの2亜群よりは,むしろカラス種群のキボシとの系統関係を意味する.この核型分析の結果は現在進行しているDNA塩基配列の結果と一致するものである.外国産の種との関係では、東欧に分布するD.unimaculataおよび北米のD.colorataはキボシまたはラウス種亜群との共通祖先から初期に派生した可能性を強く示唆する.北米に分布するクロショウジョウバエ区はすべてベーリンジアを通りアジアから渡り住んだものであるが,今年度の結果から,これまで考えられてきた2回の移動ではなくただ1度ではないかとの新たな問題も生じた.
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