1996 Fiscal Year Annual Research Report
クロショウジョウバエ区の系統分類学・進化遺伝学的研究
Project/Area Number |
07640920
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡辺 英昭 北海道教育大学, 教育学部・札幌校, 教授 (10167190)
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Keywords | ショウジョウバエ / クロショウジョウバエ区 / 進化遺伝 / 系統関係 / 染色体 |
Research Abstract |
南西諸島亜熱帯域から九州暖温帯域の野外調査から、クロショウジョウバエ区の地理的分布上にギャップが存在することが明らかになった。渡瀬線はD.angor,D.fluvialisにとっての北限であり、一方robusta種群とquadrisetata種群にとっての南限である。このことから、日本本土に分布している両種群およびvirilis種群、melanica種群は新生代第4起の大陸と陸続きになった時代に、朝鮮半島経由で渡ってきた可能性を強く示唆した。対馬と屋久島における野外調査結果はこのことを強く支持した。 姉妹種群であるrobusta種群とmelanica種群の核型分析を行った。okadai種亜群の核型はrobusta種亜群とlacertosa種亜群のものより、melanica種亜群のD.tsigana,D,moriwakiiに、端部付着型X染色体を有すること、いかなる大型の中部付着型染色体も欠くことなどで類縁性がみられた。特にD.tsiganaは地史的過去にユーラシア温帯域に広く分布していたと考えられるので、北米で適応放散しているmelanica種群はどれもD.tsiganaとの共通祖先から種分化を遂げたものである可能性が高い。 外部形態および生殖器構造の比較研究に基づく系統樹は、ADH遺伝子配列に基づく系統樹とよく一致する結果が得られた。なかでも大きな分類群であるrobusta種群の3亜種群はどれもコンパクトなまとまりを示した。quadrisetata種群については分析中であるが、現在のところokadai種亜群と結びつく結果が得られている。この両分類群はともに大型種で、湾曲したaedeagusを有すること、比較的大きなC3F指数とC指数を持つことと、および渓流依存性が強いことなどから、類縁性が示唆されてきたものである。
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