Research Abstract |
1.日本産のトノサマガエル(N_JN_J),ダルマガエルの典型種族(BB)と名古屋種族(B_NB_N),トウキョウダルマガエル(TT),韓国産のチョウセンプランシーガエル(CC),中国産のトノサマガエル(N_CN_C),台湾産のフッケンプランシーガエル(FF)の各Mating callは,音声構造上それぞれに特殊化が進んでいる(申請者,1987).これらのカエルの間で作成した8組の正逆雑種,N_JB(N_JN_J♀×BB♂)とBN_J(BB♀×N_JN_J♂),N_JCとCN_J,N_CCとCN_C,N_JFとFN_J,BCとCB,BTとTB,FCとCF,N_JN_CとN_CN_J,ならびに各対照区の雄から,それぞれ同一条件でMating callを採録し,分析した.その結果,雑種のMating callは,正逆の組み合わせにより大部分の音声成分が異なり,全音声成分のうち17%が雑種独特であり,83%が雌親類のものに近い値を示した.しかし,雄親類の音声成分に近いものは皆無であった.そのため,雑種のMating callは雌親種のものに似る傾向を示した. 2.ヨーロッパ産トノサマガエル群のカエル,イタリア産とルクセンブルグ産のRana lessonaeおよびトルコ産Rana ridibundaの間で作成した3組の正逆雑種についても,上記の極東産トノサマガエル群と同様に,雑種のMating callの音声成分は雌親種のものに近い値を示すものが多いことがわかった. 3.ダルマガエルの典型種族3集団,トウキョウダルマガエル6集団および分布域がその両亜種に挟まれているダルマガエルの名古屋種族5集団の各Matingcallを比較した結果,典型種族は全てよく似た1音節構造を示しトウキョウダルマガエルは全集団が類似した音声節構造を示したが,名古屋種族の鳴き声は,方向性を伴って変異し,分布が近い亜種のものにそれぞれ似る傾向がみられ,名古屋種族の亜種間雑種起源が示唆された. 4.広島から青森に至る16集団のツチガエルのMating callを比較した結果,一鳴きの継続時間と構成パルス数に本州の長軸に沿った明瞭なクラインがみられ,その両端の集団間ではそれぞれ5倍と4倍もの差があり,その差は,雌による識別テストから有効な生殖前隔離機構となり得ることがわかった.
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