1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640953
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
篠田 謙一 佐賀医科大学, 医学部, 講師 (30131923)
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Keywords | ペル- / チャンカイ遺跡 / ミトコンドリアDNA / Dループ領域 / 9塩基欠損 |
Research Abstract |
チャンカイ遺跡は、南米ペル-国リマ市近郊の海岸線に存在する、古典後期の遺跡である。墳墓の盗掘によって散乱状態にあった遺物を表土採集したコレクションが新潟大学医学部解剖学教室に保管されている。この遺跡からは多数の人工変形を伴う頭蓋が出土しており、頭蓋小変異の比較分析からは北米インディアンとの類似が指摘されている。また、歯の形態は典型的なSinodontyを示し、四肢を含めた計測学的な研究からは、高地原住民との間に形態学的な相違があることがわかっている。このコレクションの中から、自然状態でミイラ化したサンプルより0.1〜0.3グラムの筋肉を採取し、Proteinase Kを用いた消化を行った後、フェノールとクロロホルムによるDNAの抽出、精製を実行した。更にろ過膜を用いた濃縮と脱塩を行った後、この溶液に対してシリカによるDNAの吸着作用を利用した精製を行った。こうして得られたDNA溶液に対して、人類学的に意味のあるミトコンドリアDNAの二つの部分を増幅するプライマーセットを用いてPCR反応を実行した。その結果、14個体でミトコンドリアDANのD-ループ領域の190塩基対の増幅に成功し、5体でV領域の増幅に成功した。 アメリカ原住民では、アジア人と同様にV領域に9塩基の欠損を持つグループが存在することが知られている。今回増幅に成功した5個体は、いずれも正常なグループに属する個体であったが、南米の高地原住民では9塩基欠損の比率が総じて高く、チャンカイ人にこの様な欠損が見られないことは、集団の遺伝的な組成が異なっていることを示唆する。これは形態的な研究から見た相違とも一致している興味深い現象であるが、更にD-ループ領域の塩基配列を決定してこの集団の詳細な遺伝的な背景を明らかにする必要がある。
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