1995 Fiscal Year Annual Research Report
力学的適応モデルと遺伝的アルゴリズムを用いた2足歩行体形の進化シミュレーション
Project/Area Number |
07640956
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山崎 信寿 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70101996)
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Keywords | 直立2足歩行 / 進化 / 適応 / 神経筋骨格モデル / 運動発生 / 遺伝的アルゴリズム / シミュレーション / 人工生命 |
Research Abstract |
直立2足歩行の進化に関する様々な仮説を検証するために、身体プロポーションと淘汰基準に応じた自律的歩行運動を生成可能な神経・筋・骨格モデルを開発した。身体は腰部で垂直軸回りに回旋する体幹部と矢状面内を運動する左右の上肢、大腿、下腿、足部の合計9個の剛体筋に分割し、各関節には過伸展を防止するトルクばねが作用するものとした。また、筋骨格系は下肢の主要筋と肩および腰部の筋の左右合計24筋群でモデル化した。神経系は各関節の屈曲と伸展トルクのリズムを発生する16の振動子と、それらを相互に結合して筋への出力を発生する運動ニューロンからなる。この神経回路には力学系の運動情報である関節角度と、弾性支持面として近似した床と足との接触情報をフィードバックし、歩行の持続に必要な上位中枢からの定常入力を与えた。自律的歩行は神経回路網の発振と身体多重振子系の振動との非線形相互引き込みによるリミットサイクルとして生成される。 神経パラメータの探索と姿勢・体形の進化には遺伝的アルゴリズムを用いた。すなわち、身体特性を表す遺伝子から形質の異なる50固体を発生させ、それぞれの歩行運動を評価して適応度の高い固体を残すと共に、高負荷筋の断面積や関節可動域を修正し、これらの獲得形質の遺伝と突然変異によって新たな固体群を発生させる手順を繰り返した。ヒトの祖型モデルとして近似的にチンパンジーの身体特性を設定し、エネルギ効率や体の大きさを淘汰基準として世代交代を行った結果、ほぼ200世代で現代人体格の直立2足歩行に至ることが分かった。また、高速歩行などの他の淘汰基準では、現生人類とは異なる体形と歩容に進化することも分かった。さらに、本手法を応用し、ネアンデルタール人幼児の歩行復元を行った。以上の成果は日本人類学会、バイオメカニズム学会、生体・生理シンポジウム、日本機械学会等で発表し、計測自動制御学会に投稿中である。
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