1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07650207
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉永 隆夫 大阪大学, 基礎工学部, 助教授 (40158481)
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Keywords | フーリエ変換 / ウェーブレット変換 / フラクタル / カオス / 気泡流体 / 衝撃波 |
Research Abstract |
気泡流体中での衝撃波は,媒質の分散性のため波頭後方で強い振動波を伴う.この振動波列の振幅は波頭から離れるにつれて減衰し、局所平均周波数は高周波域から低周波域へと変化する.さらに、この振動波列に現れる不規則性が、気泡分布の不均一性のみならず非線形性にもよることが最近わかってきた.本研究では、衝撃波波頭後方に現れるこの不規則性が、気泡分布の非一様性や衝撃波の強さとどのような相関があるかを波形のスペクトル分布の観点から調べた. 上で述べた波列の特徴を考慮して、(i)窓関数をかけたフーリエ変換、(ii)短時間フーリエ変換、(iii)ウェーブレット変換の3種類の変換を用いたスペクトル解析を行った.各方法により得られた結果は以下の通りである: (i)窓関数を用いたフーリエ変換の結果、弱い衝撃波の場合、基本周波数とその高調波により波形が構成されている.一方、衝撃波が強くなると、基本周波数に加えて無理数比に近いと見られる新しい周波数が少なくとも1つ現れ、これらの線形和で波形が構成される. (ii)短時間フーリエ変換を用いた場合、衝撃波が強くなるにつれて高周波領域の増大や、広い範囲にわたる周波数分布の複雑さが増してくる様子が分かる.しかし、周波数精度が(i)の場合に比べて悪くなり、さらに、周波数分布の局所的性質は(iii)に比べて良くない. (iii)ウェーブレット変換では,周波数の精度は(i)に比べて悪いものの、衝撃波の程度が強くなるほど変換係数の時間周波数分布が自己相似的になることが示された.一方、気泡分布の非一様性が原因であると考えられている弱い衝撃波での不規則性に対しては、自己相似的は様相を認めることができなかった. 以上の結果から、カオスの1つの特徴である自己相似的なパタ-の出現や、無理数比に近い2つのスペクトル成分が現れることから、強い衝撃波に見られる不規則振動はカオスである可能性が高いといえる.
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