1995 Fiscal Year Annual Research Report
流体力学における自由表面問題の数値解析の高精度化と映像化に関する研究
Project/Area Number |
07650222
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
中山 司 中央大学, 理工学部, 教授 (20144446)
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Keywords | 自由表面流れ / 有限要素法 / 数値解析 |
Research Abstract |
本研究では,自由表面を有する粘性流体の2次元動的挙動の数値解析のための有限要素法を用いた新しい手法の開発とそれを用いた応用解析を行った.以下,項目ごとに研究の概要をまとめる. 自由表面流れ現象の新しいモデル化の考案 これまで自由表面を有する液体の流れの数値解析は,液体の占める領域のみを解析領域とし,自由表面という移動境界を含む移動境界問題として定式化されてきた.しかし,自由表面の移動と変形に伴う解析領域の形状変化を考慮しながら計算を進めることは計算プログラムが複雑になってしまい,安定な計算を達成することが難しかった. そこで本研究では,液体領域のみならず隣接する気体領域も解析領域の一部とすることにより,自由表面問題を気液2相流体の流れ問題として取り扱う方法を考案した.この方法によれば,自由表面は気液間の密度の不連続線として表現される.この方法では,計算の際に自由表面という移動境界を取り扱う必要がないため,計算アルゴリズムやプログラムが単純になり,安定な計算が可能となる.この新しい考え方を多相VOF法と名付けた.多相VOF法を有限要素法と組み合わせることにより,汎用性の高い解析手法を構築することができた. 2.移流方程式の高精度解析法の考案 領域内の密度分布の時間変化は,密度ρに関する移流方程式∂ρ/∂t+u・∇ρ=0を時間を進めながら解くことにより得られる.このような移流方程式の有限要素解法としては,SU/PG法やTaylor-Galerkin法が知られているが,人工拡散の影響が強く満足のいく計算結果は得られないことがわかった.そこで本研究では特性曲線法を応用した新しい解法を考案した.ベンチマーク問題による検討の結果,この新しい解法はSU/PG法やTaylor-Galerkin法よりも人工拡散の影響が少なく,計算精度も高いことが確認された. 応用解析による検証 多相VOF法と有限要素法を組み合わせた新しい解析手法を,(1)インクジェットプリンタのノズルから吐出されたインク液滴の挙動解析,(2)粘性突起の成長現象の数値シミュレーション,(3)流体不安定現象の数値シミュレーションに応用した.その結果,本方法が実用解法として十分な能力を有することを確認した.
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