1996 Fiscal Year Annual Research Report
空間電荷ダイナミックスに着目した電力ケーブルの絶縁性能向上への基礎研究
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07650370
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴置 保雄 名古屋大学, 理工科学総合研究センター, 教授 (10115587)
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Keywords | 電力ケーブル / 空間電荷 / パケット / 酸化防止剤 / 絶縁劣化 / 絶縁破壊 / 劣化 |
Research Abstract |
本研究では、電力ケーブルの代表的絶縁構成であるポリエチレンについて、空間電荷の動的挙動の観測を試み、これらが破壊・劣化現象に与える影響を検討し、破壊・劣化現象の防止・抑制への指針を得ることを目的としている。このため、電力ケーブル絶縁用ポリエチレンについて、高電界化での空間電荷の時間変化の観測を行った。 この結果、絶縁破壊に近い高電界において、局所的な空間電荷のピーク周期的に出現し、これが崩れることなく稼動する現象が見出された(パケット状空間電荷)。このようなパケット状電荷のダイナミックな挙動について検討を加えた結果、以下のことが明らかになった。(1)このような現象は老化防止剤の添加や劣化により起きやすくなる。(2)この現象は電流にも振動を引き起こしている。(3)パケットはバルク内部で発生しており、その領域の内部電界は空間電荷により周期的に強調される。(4)電界の周期的な強調により劣化した老化防止剤からのキャリヤ生成が起きていると考えられる。これらの結果に基づいて、モデルを作り計算機シミュレーションを行った。空間電荷パケットがキャリヤによるものではなく、キャリヤの不足領域を表しているというモデルを用い、また、電界依存性の高いキャリヤ生成と遅い再結合を仮定することにより、上記の特性を再現できることが分かった。この現象が絶縁破壊に及ぼす影響について、明らかにするには至らなかったが、高電界における特異なキャリヤ生成の存在が示唆された。このようなキャリヤ生成が、破壊につながる材料の劣化や劣化防止のための添加剤の存在に関連していることも示唆され、これらと破壊現象の関連について、引き続き検討する必要のあることが明らかになった。
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