Research Abstract |
本年度の研究では,従来型のスリット付き砂防ダムの機能改善工法の基本としてベーンと称する直立型整流板に着目し,まず,移動床実験によって,その適正な大きさと配置様式を検討した。ついで,この結果と実用上の都合を勘案して選択された幾つかの工法案について,固定床模型による3次元流速計測実験を実施し,移動床実験結果をもたらした水理機構を検証した。 移動床実験では,まず,ベーンを設置しない状態で,堆砂面上の流れが移動限界をやや下回る掃流力しか持たない流量を通水して,ダム直上流の洗掘孔の形状と土砂の挙動を観察した。ついで,ベーンの設置法として,1対のベーンの場合と2対のベーンの場合を考え,それぞれ,長さや設置間隔を数種に変化させた実験において,洗掘孔の集中度や上流堆砂面における浸食流路の発達状況,排出土砂量の時間変化などを計測した。実験結果として,ベーンを1対設置する場合,徒にその長さを大きくしてもそれに応じた好結果が生じることは期待できす,概ねスリット幅の1〜2倍程度に止めることが,実用上の観点からも望ましいことが明らかにされた。一方,ベーンを2対とする場合には,上流側・下流側のベーンを並行にし,両者を接近流方向に投影した面が20〜50%程度重なり,また,両者の間隔をベーン長さとほぼ同程度となるようにする場合に良好な排砂効果が期待できることが確認された。なお,ベーンを1対とすべきか2対とすべきかについては,さらなる検討が必要である。 固定床実験では,移動床実験で好結果を得たベーン設置方法を1対,2対の場合から各々2組選択し,3次元流況を調べた。その結果,排砂効率の大小は,流掘孔に流入直後に生じる底面流速の減少をいかに小さくするかに依存していることが分かり,今後におけるさらなる改善の見通しが得られた。
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