1995 Fiscal Year Annual Research Report
インパルス応答の空間情報平均化処理に基づく音場評価手法に関する研究
Project/Area Number |
07650697
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
古屋 浩 九州共立大学, 工学部, 講師 (00238700)
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Keywords | 室内音響 / 幾何音響シミュレーション / 音源の指向特性 / 音源の位置 / 室内音響指標 |
Research Abstract |
一般に、室内音場の評価は、音源・受音点間のインパルス応答という非常に厳密な2点間の伝達関数をもとに算出された物理指標を用いて行われる。一方、コンサートホール等の音の良否は、最終的には演奏会における人間の聴感印象に委ねられる。例えば、“このホールの客席中央付近は、ピアノソロの場合音量感に乏しい"“弦楽オ-ケストラに対して、2階席は非常に澄んだ音がする"或いは“前方座席で、金管の音が耳に付く"というように音場の評価は行われることから、音源側に関しては音源の種別や空間的な大きさが、受音側についてはある広さを有する聴取エリアの設定という視点が重要な意味を持つと考えられる。しかしながら、設計時における予測や測定評価は、音源について言えば、舞台上の代表点に設定した無指向性音源だけを用いて行われており、実際の演奏会等における聴感印象との対応等についても明らかにされていない。このような観点から、本研究は、音源の性質や聴取領域の空間的な大きさを考慮に入れた、より実際の聴取条件に近い形での室内音場の評価法を明らかにしようとするものである。 本年度は、まず、音源側に焦点をあて、舞台上の音源(楽器や音声)が有する基本的な性質、すなわち指向特性や設置位置の違いが、通常、無指向性音源を想定して求められる室内音響指標の値にどの程度の影響を与えるかについて、幾何音響をベースにしたコンピュータシミュレーション手法により検討した。解析は、既存の多目的ホールを対象に、(I)単純な音源モデルを想定した場合と、(II)具体的な楽器を想定した場合の2通りについて行った。得られたインパルス応答から、C_<80>、EDT、L_fといった代表的な室内音場評価指標を算出し、無指向性音源を用いた場合と比較検討した。その結果、音源の特性の違いにより、C_<80>について2〜4dB、EDTについては10〜30%以上の差が生じること、またL_fについては、音源(楽器)によるばらつきが大きい空間と小さい空間が認められることが明らかになった。これらのことは、ホールの音場の質の違いを反映しているものと考えられ、無指向性音源に加えて指向性音源を用いることにより、実際のコンサート音場に対応した評価法が有効となることを示している。
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Research Products
(1 results)