1997 Fiscal Year Annual Research Report
建築空間における痴呆性老人の経路探索歩行行動に関する研究
Project/Area Number |
07650724
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
足立 啓 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (50140249)
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Keywords | 空間認知 / 痴呆 / 眼球運動 / 経路探索 / 老人ホーム |
Research Abstract |
本研究では,環境行動研究の視点から痴呆性老人の建築空間における空間認知機能,とりわけ経路探索歩行時における視覚情報の探索過程をアイカメラ法によって明らかにし,安全に目標地に到達しうる建築環境条件のあり方を検討した。本研究は3章からなる。 第1章では,アイカメラを装着した痴呆性老人が誘導情報の連続的・非連続的に配置された分岐点(T字路)を持つ屋内経路を歩行して目的地に到達する実験を行い,経路上の視覚誘導情報の収集過程について健常老人と健常青年との比較で検討した。結果として,1)3属性ともに誘導情報は非連続的に配置されるよりも連続的に配置された方が有効。特に脳血管性痴呆には自力到達を助長する情報としての有効性が示唆される。2)痴呆性老人は床へ注視が偏る傾向があることから,床へ連続的に誘導情報を配置することが注視をさらに増加させるのに重要であること,などが明らかとなった。 第2章では,痴呆性老人,精神薄弱者,および健常者がホール状空間を経て目的地に到達する実験を行い,視覚情報収集過程を比較検討した。結果として,1)ホール状空間は視覚情報の手ががりが得にくく,痴呆性老人や精神薄弱者は誘導情報への注視が不十分なため,目的地に到達困難な事例があること,2)痴呆性老人は正面注視が多く,健常者のように広範な探索注視がないこと,3)精神薄弱者は正面注視の事例と誘導情報以外への過剰注視の事例もあり多様な傾向を示すこと,などが確かめられた。 第3章では,室内歩行空間に各種のバリア(障害物)を設置し,バリアに対する注視特性を検討した結果,健常者に比べてバリアの発見は遅いものの低所への注視傾向を示すためにバリアの回避行動を示した。しかしながら,狭い通路ではバリアの回避行動がぎこちなく,安全のために余裕のある通路幅を確保する必要が示唆された。
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Research Products
(1 results)