1995 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代フランス建築理論における「構成」概念についての基礎的研究
Project/Area Number |
07650738
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
白井 秀和 福井大学, 工学部, 教授 (40206272)
|
Keywords | 構成 / 経済 / 近代主義 / フランス / 建築 / 効率 |
Research Abstract |
近代建築思潮の根幹の重要な部分を形成したと考えられる「構成」概念(さまざまな原語に対応する)について、とりわけその変遷を、フランス近世・近代の建築理論を中心に洞察することを目的とする本研究は、今年度(平成7年度)においては、基本的史料の収集に力点が置かれた。そこに現われた「構成」概念は、economie、composition,constitution,structure,plan,ossatureなど多様であるが、この中でとりわけ、economieなる語に注目した。フランス語のeconomieには、よく知られた「経済」なる意味があるが、元々この語は、管理者を表わすギリシャ語oikonomosから、家政・経済を表わすラテン語oeconomiaを経て、フランスに導入されたものである。しかし、近世の建築理論では、この語は作品の構成もしくは組織を表わす語として専ら使われていた。そのことは、この時代の重要な史料から明らかにされる、この語の持つ「経済」という意味が前面に押しだされてくるのは、19世紀初期であり。とりわけ建築理論家デュランの著作においてこのことが顕著である。こうした「構成」から「経済」への転回は、ちょうど近代社会すなわち工業化社会が始まる19世紀に起こった。この点に注目することで、本来は作品の特質を指したeconomieが、近代化(工業化もしくは効率化)の波とともに、一律的に「経済性」(つまり効率化)を表わす語になっていたまさしくそのことに、「近代主義modernite」の誤謬を指摘することもできる。平成7年度は、この転回以前にeconomieが包摂していた「構成」という正統的な意味を実証的に明らかにすることに、とりわけ焦点があてられた。
|