1996 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代フランス建築理論における「構成」概念についての基礎的研究
Project/Area Number |
07650738
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Research Institution | FUKUI UNIVERSITY,FACULTY OF ENGINEERING |
Principal Investigator |
白井 秀和 福井大学, 工学部, 教授 (40206272)
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Keywords | 構成 / 経済 / 近代主義 / フランス / 建築 / 効率 |
Research Abstract |
近代建築思潮の根幹をなす重要な部分を形成したと考えられる「構成」概念(さまざまな原語に対応する)について、とりわけその変遷を、フランス近世・近代の建築理論を中心に洞察することを目的とした本研究は、基本的史料の収集に力点が置かれた昨年度に続いて、本年度は、economieの周辺に位置する他の構成概念の解明に重点が置かれた。とりわけ『分野別百科全書・建築篇』(パリ刊1788-1825)および『建築歴史辞典』(パリ刊1832)を著わしたA=ch・カトルメール・ド・カンシーによるいくつもの構成概念、composition,structure,disposition,そして distributionの分析を基にして、これら諸概念が、economieとどういう関係性をもっていたかが解明された。そこで明らかになったのは、経済というもうひとつの概念を担ったeconomieに取って代わって、構成そのものをはっきりと明示するcomposition(共に置くの意)が、次第によく使われるようになり、これに対応して、要素を表わすelementなる語の使用頻度が増したことである。それは、今世紀の初めに著わされたJ・ガデの大部の建築書Elements et theorie de farchitectureに見るごとく、要素の集まりElementsが原論という意味を形づくることからも察せられるように、構成概念のいわば揺籃期であった18世紀から19世紀を経て、この概念が一種の定式化の方向へと定着していったことが明らかになるのである。つまり、いまだ曖昧性を残したままのeconomieに示される構成概念が、18世紀という実用の世紀を経て、何よりも応用に即したcomposition(まとまり)とelement(まとまりを形づくる要素)という明確な対応関係を表わす語に移されてゆく過程が明らかになるのである。近世から近代への転回が、economieからcompositionへの移行によって、はっきりと映しだされるのである。
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