1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07650773
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
南雲 道彦 早稲田大学, 理工学部, 教授 (40208062)
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Keywords | 鉄鋼 / 高強度鋼 / 水素脆性 / 遅れ破壊 / 水素分析 |
Research Abstract |
1.環境条件として荷重を変動させた場合に水素脆化が促進されることを確認した。この場合の水素の状態を加熱放出特性により調べた。PC鋼棒での結果は、約100℃に放出ピークを持つ拡散性水素量が荷重変動によって増加し、また室温での拡散速度も大きくなっていることが判明した。 2.環境条件として水素添加ポテンシャルを変動させた場合にも水素脆化が促進されることを低速引張り試験で確認した。定荷重遅れ破壊試験機を作製し、より定量的な測定を進めている。 3.拡散性水素と水素脆化との関係を明らかにするために、水素の存在下で塑性変形させた場合の特徴を焼き戻し温度を変えたSCM440鋼について調べた。約100℃で放出される水素には2種類あり、塑性変形に伴なって増加する水素と、もとの組織中の析出物などにトラップされている水素とがある。前者は放出ピーク温度が高めており、放出の活性化エネルギーも大きい。水素の存在下で塑性変形すると放出量の増加が顕著であり、その増加量と水素脆化度とが対応することを見出した。 4.上記の拡散性水素の意味を明らかにするために、塑性変形後に回復処理を与えた試料について水素を吸蔵させ、その放出特性を調べた。約100℃で放出される拡散性水素は変形量に伴なって増加するが、変形後の約150℃までの比較的低温の回復処理で水素吸蔵はほとんど起こらなくなる。すなわち、拡散性水素は点欠陥にトラップされたものであり、また昇温過程で点欠陥が消滅するために水素が放出されることが明らかになった。水素は変形によって導入される点欠陥を安定化することにより脆化を促進するものである可能性が示された。
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[Publications] 佐々木 聡洋,南雲道彦: "高強度鋼の水素脆性と拡散性水素挙動の関係" 材料とプロセス. 8. 1499 (1995)
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[Publications] 吉澤 満,南雲道彦: "高強度鋼の水素脆性に及ぼす水素添加ポテンシャル変動の影響" 材料とプロセス. 8. 1450 (1995)